裏庭で三人の騎士に取り囲まれ、アメリアは後ろ手に縛り上げられてる。ついでに座らされ、剣を突きつけられてる。三人の内、一人はトラウトマンさんだ。騎士たちはいつも紐を持ってる訳じゃないけど、一人が紐を取りに行ってる間、トラウトマンさんともう一人の騎士が剣で威嚇しながらだから、アメリアも下手な動きは出来ない。 「姉上が無事で何よりでした。実はこのアメリアという女は、姉上を殺しに来た殺し屋だったんです」 うん、知ってる。……なんてことは言えない。 「え!? ヴィン、本当!?」 このあたりが無難よね。 頷いてヴィンは言った。 「一ヶ月前のことです。怪しい動きをしていた、出入りの商人が、散歩中の姉上を、クロスボウで狙っているところに、偶然、出くわしたのです。そこで締め上げたり、自白剤を使って調べたところ、その商人は姉上を殺しに来た殺し屋だとわかりました。コードネームは、ノーム。四人組の殺し屋、その一人です」 「四人組……」 と、戦慄の表情を浮かべるあたし。うなずき、ヴィンは続ける。 「四人はそれぞれ四大元素の精霊にちなんだ名前を持っています。残りの三人は、シルフ、ウンディーネ、サラマンダー。すでに姉上の身近に潜伏しているとのことですが、誰がどのように潜り込んでいるかは、チームのメンバーも知らないとか。それ以前に、彼らはお互い会ったこともない、と。そこでまず、屋敷のメイドを、調べることにしたんです」 「調べるって、どうやったの? ……………………」 このあと、なんて言ってたか、忘れたわ。 「最近雇った者の中で、疑わしい者に遠方へ行く用事を言いつけ、留守の間に部屋の中や持ち物なども徹底的に調べました。その結果、このアメリアの旅行鞄の内の皮の裏から、あるものが見つかりました。それがわかったのが、アメリアが帰ってきた後、深夜のことでした。持ち出していた鞄を部屋に戻す余裕もなかったのですが、とりあえず今朝、それを突きつけて、事情を聞こうとしていた矢先、こういうことに」 よかった、ヴィンがうまいことつなげてくれて。 ヴィンは上着のポケットから布きれを出した。 「鞄の内側の皮を剥がしたら、こんなものがあったんです」 その布きれには、何かの魔法円のようなものがあって、その上下左右にノーム、シルフ、ウンディーネ、サラマンダーと書いてあった。やっぱ、日本語に思えたけど、ここ本当に日本じゃないの? それはともかく、シルフのところに、赤黒い拇印のようなものがあった。この赤黒いのって、なんか、血っぽい……。やっぱ血なんだろうなあ。 「おそらく、これは連中のシンボル、あるいは誓いの印でしょう。この拇印から察するに、アメリアはシルフだと思われます」 …………………………。 「ああ、そうか!!」 「うわ!? 姉上、どうかなさいましたか!?」 ヴィンだけじゃない、三人の騎士も、アメリアも驚いてる。 「あ、え、えーと、ごめんね、驚かせちゃって。なんでもないわ」 怪訝な表情の五人を笑いでごまかす。 いやあ、今、繋がったわ。今、ここにトラウトマンさんがいるってことは、さっきヴィンに言ってた「例の件」って、このことだったんだ。 え? ちょっと待って? ていうことは、あのままだったらアメリアの正体がわかって、こんな風にお縄になってて、あたしムダなバトルしなくてもよかったってこと?
……くわあぁぁぁ〜。
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