20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:婚約破棄された令嬢は婚約者を奪った相手に復讐するのが習わしのようです 第一部 作者:ジン 竜珠

第13回   仕込み
 アメリアを倒した二日後の夜。
 あたしはヴィンの部屋に行った。
「ヴィン、今、ちょっといい?」
『え? あ、姉上!? ちょ、ちょっと待ってください!!』
 妙に慌てた様子の返事。そして、かすかに聞こえるバタバタした音。
 ややおいて、ドアが開いた。
「お待たせしました、姉上。どういった用事でしょうか?」
 なんか、慌てた様子は隠せてない。それに。
「ねえ、ヴィン。部屋から、ちょっと変なニオイがただよってくるんだけど」
「気にしないでください!!」
 ヴィンが笑顔で、でも猛烈な勢いで言う。
「そ、そう?」
 その勢いに、あたしはちょっと鼻白んだ。
「それより! 何か御用があるんじゃないですか!?」
 ヴィンの、なんだか妙な気迫に押されたまま、あたしは言った。
「グートルーンについて、何か、わかった?」
 少しおいて、ヴィンが言った。
「人をやって、フォルバッハ侯爵の周辺も、あわせて探っていますが、まだ、これといって」
「そう」
「でも、関係ないとは思いますが、一つ、面白いことがわかりました」
「面白いこと?」
「はい」
 と、ヴィンは頷いた。
「あの場で婚約破棄した上、新たな婚約まで宣言までしたというのに、フォン・フォルバッハの家では、一切、婚礼の用意をしていないようなのです」
「用意をしていない?」
「はい。もちろん、この先で破談になる可能性もなくはないのですが、宣言をした以上、サー・ハインリヒのお父上である、サー・テオバルトの耳に入らぬはずはない。そうなれば、必ず何らかの動きがあるはずなのです。例えば、両家の交流の宴とか。ですが、そういう様子は一切ない、と」
「ふうん」
 なんか、妙な感じね。
「ああ、それと、もう一つ、いいかしら?」
「はい、なんでしょう?」
「フォン・フォルバッハ家には、誰が調査に行ったの? そいつが嘘を言ってる可能性があるかも……」

 今の質問の答えを聞いたあと、ふと、あたしは聞いてみた。
「ねえ、もう一つ、とかって言ったけど、もう一個だけ、いい?」
「はい、構いませんよ」
 ヴィンは笑顔で言った。
「あのね……」


 ハンナが「散歩に行こう」と誘ってくる前夜。あたしは、人の目を盗んでお屋敷を出て、ある「仕込み」をしておいた。もし、同じ出来事がループしているなら、この「仕込み」、きっと大きな武器になる。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 165