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作品名:○リキュア Psy! Bang! Shock! 第七話 作者:ジン 竜珠

第5回   第七話 プロテウスの覚醒−5
 サバキングが右手を天に掲げる。するとそこに、どこからともなく現れた文字の羅列が集まる。それは「ハラスメントの内容」と、「ハラスメントを行った者の住所・氏名・家族構成」といった個人情報だった。
 その文字の羅列が槍を形作ると、サバキングはその槍を弁護人側にいたマナサマーヌの一体に投げつける。
 その槍に胸の中央を貫かれたマナサマーヌは、まるで悲鳴のような甲高い「音」を吐き出して、爆ぜるように消滅した。
 マズい!
 ジャスティスは、否、リブラたちも直感的に感じた。
 おそらくあの一撃を受けて消滅したマナサマーヌの主は、なんらかの甚大なダメージを受けてる! 戦慄とともにサバキングを見上げると、その手に再び個人情報の文字列が集まっている。
 それが槍になる前に、ジャスティスはジャンプしていた。
「やめろー!!」
 そして宙で身をひねり、サバキングに右の蹴りを食らわせる。倒すまでにはいかなかったものの、サバキングがよろける。
 体勢を立て直したサバキングは、着地したジャスティス目がけて口から衝撃波を放つ。
 セイギズラーのときよりも、数段、威力が増している。衝撃波を受けて仰向けに倒れたジャスティスは、一瞬、気を失ったようだ。だが、体をむしばむ痛みと不快感で意識を取り戻す。
 苦鳴を上げていると、ジャスティスの前にリブラがソーサーを手に立ちはだかる。だが、ソーサーはすぐに砕け散り、リブラも悲鳴とともに地面に縫い付けられる。
 すぐに、その衝撃波の攻撃は逸れた。どうやらヘルマが渾身の体当たりをサバキングの脚に食らわせたらしい。
 どうにか立ち上がり、ジャスティスたち三人はサバキングを見上げる。
『サバキィィィィング!』
 一声吠え、サバキングがジャスティスたちを見下ろす。そして口から衝撃波を吐こうとするのが、開いた口の周囲にエネルギーの揺らぎでわかった。
 それを紙一重でかわして攻撃に転じようと、ジャスティスが身構えたとき。
『サバッ!?』
 サバキングが身を震わせる。エネルギーの揺らぎもなくなっている。
 何事かと思っていると、サバキングの頭頂部にあったスマホが、ビリビリと振動を起こし、砕け散った。
 すると、それまで感じていた威圧感、パワー、脅威といったものが急速に縮小していく。大きさ・体の形はそのままだが、セイギズラー程度にまで、その脅威は小さくなった。
 そのとき、ベレロフォーンの声がした。
「やっぱり、最初から羽根を埋め込まないと、エネルギーバランスが悪くなるのか」
 見ると、イカロスが頷いてベレロフォーンに応えていた。
「ああ。元々のエネルギー体との相性が悪いんだろう」
 そして、二人が姿を消す。
 しばし、それを見ていたジャスティスだったが、リブラたちの声に気を取り直し、怪物体を見る。「ある考え」が脳裏をよぎった。それが正しいかどうかは分からないが、今はそれしかない。そして、己自身に言い聞かせるように、言った。
「検察の公訴は、これを退け、棄却します!」
 胸にある判事バッジから、白と紫色の勾玉が互い違いに組み合わさった、太極マークが飛び出し、直径三十センチほどになる。白の勾玉を右手で、紫色の勾玉を左手で持ち、左右に引っ張って、銀色のポールを引き出す。そのポールを右手で持ち、頭上で振り回すとポールが伸びていく。そしてポールの中央を両手で持ち、折るようにしてたたみ、勾玉を組み合わせると、マゼンタ色の光とともに、白と紫色のマーブル模様で彩られた勾玉のような形状のハンマーの打撃部分が現れる。
 ジャスティスはサバキングの体高を越えるほどの高さにまでジャンプし、宙返りしてハンマーを打ち下ろした!
「○リキュア、ディスミサル・ガベルッ!!」
 Dismissal(ディスミサル)。法律用語では「公訴の棄却」を意味する言葉だ。
 ジャスティスの一撃を受け、その落下に合わせるようにサバキングが粒子となって消えていく。
 マナサマーヌも消えていった。
「あとは、現実の裁判で戦って下さい。中にはハラスメントでは、ないものもあるかも知れませんが」
 ミス・テイクも姿を消していた。


「さて、イカロス、ここはこのぐらいにして、他の場所へ行こう」
「そうだな」
 ベレロフォーンの言葉に応えたイカロスはベレロフォーンとともに空へ向かって飛翔する。そしてそこから南にある海へと飛行を始めたとき。
「ウヌッ!?」
 何かに縛(いまし)められたように体が動かなくなった。それだけではない、強い力で引き戻されるような感覚がするのだ。
「な……んだ、これは……?」
 ベレロフォーンも同じらしい。
 どうにかこれから逃れねば、と思っていると、頭の中で声が響いた。

“お前たちには、まだまだ役に立ってもらうぞ”

 女の声のようだが、まるで地の底から響いてくるような怨嗟が籠もっていた。
 そして、突然、猛烈に強い力で後ろに引っ張られ、街の北部にある丘に激突するように墜落した。


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