予告より早かっただろうか、セイギズラーに集まる無責任な書き込みの羅列、すなわちマナスが減ってきた。つまり供給がなくなったということ。既にサイトにアクセスしている者は、書き込みをしても反映されず、新規の者はサイトにたどり着けないということだ。マナサマーヌの数も、三十二体で止まっている。 そしてセイギズラーの勢いも弱くなってきた。どうやら、ようやく「裁判」が行えそうだ。 ジャスティスはセイギズラーの前方七、八メートルのところに立って言った。 「では、検察官、起訴状の朗読……は、はなはだ異例ですが省略致します。先ほど行われたので。なお、これもまた異例ではありますが、公判の流れを迅速にするため、権利の告知を省略し、被告人・個別に罪状認否を行わず、罪を認めるか否か、で群(ぐん)を作っていただきます。罪を認める被告人は、検察官の方へ、否定する被告人は弁護人の方へ移動して下さい」 すると被告人のマナサマーヌがゾロゾロと移動を始め、三十二体のうち、五体がヘルマの、すなわち検察官の方へ、残る二十七体が弁護人であるリブラの方へ移動した。 “うわあ、予想はしてたけど、それ以上の数が否認の方に来ちゃったなあ” リブラが困惑した表情で言う。 「ねえ、これ、どうするの?」 「うん。ちょっと変則的なこと、しようと思ってる。これでもボクは、弁護士と検事の娘だよ?」 ニヤリとすると、ジャスティスは弁護人の方に集まったマナサマーヌの群を見る。そして宣告するように言った。 「被告人たちに尋ねます。あなた方が原告に対して行った言動に、原告の容貌や体型に対するものが含まれていましたか? それらを絡めて相手を誹謗中傷した自覚のある者は、検察官の方へ移動して下さい」 マナサマーヌは意志の具現化らしいことは、なんとなくわかった。つまり、例外はあったものの、表層の意識が強力に拘わらない分、何かを指摘されたら、おおむね素直で嘘はつけない。 案の定、十体ばかりが移動した。 ジャスティスはさらなる問いを行う。 「被告人たちに尋ねます。あなた方の言動の後に、原告が明らかに体調を崩した、あるいはメンタルに変調を来したと確認出来る者がいましたか?」 ここでまた、六体ばかりが移動する。 さて、次の……と思ったときだった。
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