その直後だった。 「ドゴォォォォォン!」と形容したくなるような音が轟いた。何事かと思ってそちらを見ると、門扉のこちら側にうつむいた○ュアジャスティスが立っている。だが、周囲には土埃が竜巻のように巻き起こり、気のせいかその渦に火の粉が混じっているように見えた。 ゆらり、と顔を上げたかと思うと、ジャスティスが跳躍した。そして空から怒声とともにジャスティスが降ってきた。 「お前が犯人だったかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! ○リキュア・グレートガベルゥッッッ!!」 爆撃のように降ってきたジャスティスが、手にしたハンマーでセイギズラーを粉砕した。 『グギャアアアアアアアッ!!』 絶叫と大爆音の後に、もうもうと立ち上る土煙の中で「ふ〜っ、ふ〜っ」と怒り肩で息をするジャスティス。 ひきつった笑みで、リブラが言った。 「え、ええっと、ひ、被告人は、無罪、でいいわよね、判事代行?」 理鉈も、いつものような眠そうな表情ながらも、やや引きつり気味の笑みで、「う、うん」と頷く。 被告人のマナサマーヌが、大きく息を吸い込んで吐くような仕草をしてから、緊張が解けたかのように言った。 『いやあ、無実が分かって良かったよ。……ああ、そういえば、あのモデルの娘(こ)、ちょっとオッチョコチョイだったね』 ヘルマが質問する。 「オッチョコチョイって、どういう意味?」 『大急ぎで着替えたんだろうね、スカート、穿き忘れてて。あのまま出てたら、どうなったか、って思ってさあ、あの時は僕もビックリしたよ』 「……なんで、君がそれ知ってるの?」 低い声でジャスティスが言った。 『え?』 マナサマーヌがジャスティスの方を向く。 「更衣室は、校舎二階の被服室。廊下側の窓にはカーテンはなかったけど、誰も覗く者はないだろうってことだったんだ……」 『…………』 「君の頭の上に浮いてるそれ、ドローンだよね? カメラ、ついてるよね、それ?」 『…………………………あ』 「お前もかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ガベル!ガベル!ガベル!ガベル!ガベル!ガベル!ガベル!ガベル!」 ジャスティスが何度も何度も、両手持ちにしたハンマーでマナサマーヌを打ち据える。 ヘルマが、少し気後れしながら、ジャスティスに言った。 「ジャスティス、ていうか、ミークちゃん、マナサマーヌ、もう消えてるから……」 それでも何度かハンマーを地面に打ったあと、美郁は宣言した。 「これにて閉廷ッッッ!!!!」 美郁がハンマーを地面に打ち付けた。 轟音とともに、そこにクレーターが出来、土くれが舞い上がってもうもうと土煙が巻き起こった。
盗撮犯とドローン男がすぐに逮捕されたのは、また別の話。
その夜。 「SABAKI-ニュース.コム」のオーナー室に、オーナーである笹可児 亜羅祢(さあかに あらね)と、編集長がいた。 亜羅祢は壁に背を預けて立ち、編集長はそれに面する形で立っている。二人とも、紙束を持っていた。 「−−−以上が、本日寄せられた情報(ネタ)です」 「そう。……この『今日の夕方、佐波木東高校のグラウンドで爆発騒ぎがあった』っていうの、取材してきて。それから『キワモノ』からは−−−」 亜羅祢が指示を出すと、編集長が一礼して、部屋を出る。 しばらくの間(ま)を置き、亜羅祢は床を見ると。 右手を拳(こぶし)に握り、小指側で床を「ドン!」と殴る。そして、呟いた。 「……おのれ、○リキュア、またしても……!」 怨嗟の籠もった声で。 そのときの亜羅祢の顔は、怒りに歪み、とても人間とは思えないモノであったが、それを見とがめる人間はいない。
深夜、街の上空に二人の青年がいた。 高空に浮遊するなど、普通の人間ではない。着ているのは異国情緒を感じさせるエキゾチックなもの。 二人のうち、一人は右脚の付け根から黄金の鎧をまとっている。 鎧をまとった青年が言った。 「この世界に戻ってきたな。ここにあるというのか?」 もう一人が答える。 「そこまでは確信がないが。でも、何か感じるんだ。お前はどうだ?」 「まあ、言われてみれば、俺もなんとなく」 「ほかの世界を巡り巡ってみたが、結局、この世界にあるとしたなら、皮肉な話だな」 「そうだな。だが、ここも様変わりしたなあ」 鎧をまとった青年のこの言葉に、もう一人が応える。 「あれから三千年は経ってる。だが、ここまで随分と進歩したものだ」 「テクノロジーだけで見たら、ここ以上に発達した世界もあったが。それでも感慨が深い。……で? 特にこの街を選んだ理由は?」 「お前も感じるだろう、“何か”を」 「…………」 「とにかく、探してみようぜ。まずはこの街だ」 「ああ。うまくすれば、ここで見つかるかも知れないな、……俺たちの“翼”が」
そして、二人の青年は空気に溶け込むように、その姿を消した。
(○リキュア Psy! Bang! Shock! 第六話・了)
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