『そいつのパソコンを調べたらいい!』
リブラがため息をつく。 「そんなこと、認められるわけないでしょ」 もっともだと思いながら、ヘルマは理鉈に言った。 「よろしいですか、判事代行?」 「なんでしょうか?」 「変則的ですが、こちらから原告に質問しても宜しいでしょうか?」 「認めます」 理鉈も疑問に思っていたと見えて、即座に答が返ってきた。 ヘルマは頷いてセイギズラーに聞いた。 「原告、あなた、この被告人を盗撮犯だと確信しているようですが、それが妙な荷物を持っているから、というのは根拠が弱いように思います。他の根拠はありませんか?」
『そ、それは……』
セイギズラーはすぐには答えなかった。 そしてしばらくおいて。
『勘です!』
この瞬間、ヘルマは直感した。 『……こいつが真犯人か……!』 だが、このセイギズラーの元になった人物が、原告のマナサマーヌの元になった人物に、個人的な怨みを抱いていて、「盗撮犯」にしてやろうと思っている可能性もある。 ならば。 咳払いをして、ヘルマは言った。 「判事代行、ここで証拠能力について、疑義が生じました。異例ではありますが、検察による原告に対する尋問を許可願います」 「許可します」 理鉈からは速攻で返ってきた。 ヘルマはセイギズラーに訊く。 「原告、被告人について、あなたの認知度をお尋ねします。被告人の姓名、生年月日、住所地、職業などについて、どの程度、知悉(ちしつ)していますか?」
『…………多分、大学生程度……? それ以外は、知りません……』
何やら、落ち着かない素振りでスマホの中の「目」を、キョロキョロとせわしなく動かしながら、セイギズラーが答える。 こめかみに青筋を立てて、理鉈が言った。 「刑事訴訟法第三百十八条に則り、原告の提示した証拠について、本法廷は不採用とします!」 セイギズラーに対して苦々しい思いを抱いてヘルマが言った。 「検察は、本件について一切の公訴を取り下げます!」
『ちょ、ちょっと、あんた、そんな!』
セイギズラーが慌てたようにオロオロし始めた。 「やかましい」 ヘルマとリブラの声がハモる。そして。 「○リキュア・リバティーソーサー!」 「○リキュア・アキューゼイション・チェーン!」 リブラとヘルマ、二人の必殺技が炸裂する。どうやら、リブラもセイギズラーに対して、抱いた思いは同じだったらしい。
『ぐっぱぁぁぁぁ!!』
セイギズラーが吹っ飛ぶ。ジャスティスでないと完全消滅させることは出来ないが、それでも相当なダメージは与えることが出来た。美郁が来るまでの時間稼ぎには、なるだろう。 そう思っていたら、あおむけに倒れたセイギズラーの顔から、光の塊が飛び出し、ある「形」になった。 「なに?」と、リブラが首を傾げて五、六メートルほどの高さに浮き上がった光の塊を見る。ヘルマも見上げた。 するとその光は、開いたノートパソコンのような形状になる。そして、そのディスプレイに、映し出されたのは。 リブラが言った。 「あ。あれ、ミークちゃんを盗撮した画像だ」 「え? あれが、そうなの?」 それはスカートの内側の画像。ペチパンツを穿いているため、写っているのはショーツそのものではないが、それでも被写体に恥辱を与える写真には違いない。 ヘルマはリブラと顔を見合わせる。リブラは苦虫を噛みつぶしたような表情になっていた。おそらくヘルマも同じ様な表情になっているに違いない。 理鉈が呟くように言った。 「自分のやったことを、誰かに、なすりつけるつもりだったか。ゲスめ!」
|
|