セイギズラーの顔を形成する画面に、なにかの記号が表示される。そして、その記号が上空に飛び出して、言葉となる。その言葉は。
『覗き、ダメ!』 『盗撮、ダメ!』 『盗撮したのは、アイツ!』 『アイツこそが盗撮犯だ!』
どうやら、盗撮絡みのセイギズラーのようだ。 「ミークちゃんとの関係……っていうのは、タイミング良すぎよね」 ヘルマがプリ・タブレットを手にし、起訴状を喚び出す。そして朗読に入った。 「公訴事実。本件被告は、五月○日、佐波木東高等学校にて開催された東町祭の場において、イベントの一つ『コスプレ撮影会』にモデルとして出演した、女子中学生のスカートの内側を何らかの撮影機材を用いて撮影し、その画像をパソコン等に記録し、不特定多数の第三者に閲覧可能としたものである。罪名及び罰条、撮影罪、性的姿態撮影等処罰法第二条、第三条、及び第四条」 そしてタブレットに「PROSECUTION(起訴)」と打ち込む。すると、ヘルマの上半身のチェーンが光を放ち、緩んだ。自動的に頭の上にあるゴーグルが下りてきて目の前に来る。その視界に、セイギズラーのスマホの中で隠れながらも蠢く被告人が、ハッキリと表示されていた。チェーンを右手で引き出し、セイギズラーの顔を形成するスマホの画面に撃ち込む。 「出てきなさい、被告人!」 チェーンを引っ張ると、スマホから○ュアヘルマのチェーンに絡められた白い人影が、飛び出した。 まだ、美郁がやってくる気配はない。今の自分に出来るのは、何らかの攻撃があったときにそれを防ぐことだけだ。 そのとき、柵を乗り越えて希依と理鉈がやってきた。希依が○ュアリブラに変身する。 「リブラ、ミークちゃんは?」 「警察署に告発状を持って行くって。説明しないといけないから、ちょっと時間がかかると思う」 「そう。……どうする?」 「そうね。私たちじゃあ、セイギズラーを完全に消滅させることはできない」 どうしたものか、と思っているとき、理鉈が何かに気がついた様にプリ・タブレットをスカートのポケットから出した。そして。 「なるほど、私のヴェーダには、こんな力もあったんだね……」 そう呟き、理鉈はプリ・タブレットを開いてペンで何かを入力した。すると、空中に「ある書類」が投影された。そこに書かれている文字は、明らかに日本語ではない。そして投影された書類に、理鉈がペンで、やはり日本語ではない文字で、何かを書く。 すると、書類が発光し消えたかと思うと、理鉈の胸に○ュアジャスティスが胸に着けているシンボルと、同じような八咫鏡のバッジが、光とともに現れた。 訳が分からないでいると、理鉈が言った。 「今の書類は白紙委任状。この場にジャスティスがいなくても、必要箇所に署名をした人……この場合、私がその権限を持つっていう書類。で、さっき表示されたのは、私の国の言葉ね。だから、二人はそのまま、進めてもらって構わないよ」 そう言って、理鉈は自分のプリ・タブレットを見る。「こんな力があったなんて」と呟いたように、ヘルマには聞こえた。 しばらくプリ・タブレットを見ていた理鉈だったが、顔を上げ、咳払いをして言った。 「あなたには、黙秘権があります。不利益になることについては、答えなくても構いません。今の検察官の起訴状ですが、あなたは認めますか、被告人?」 その言葉に、被告人のマナサマーヌがブンブンと、首を横に振る。 『冗談じゃない! 僕はそんなことはしていない! 大体、なんで僕がこの場に呼ばれたんだ!』 ヘルマはセイギズラーを見る。セイギズラーの顔から、また文字列が現れた。
『こいつは、イベントからの帰り、いいものを見た、と言ってた』
首を傾げ、リブラが言った。 「異議あり。それだけでは、盗撮の犯人とは言えないのでは?」 理鉈も頷く。そして言う。 「検察官、何か、証拠はありますか?」 その問いに、ヘルマはプリ・タブレットを操作する。打ち込んだワードは「EVIDENCE(証拠)」だ。 プリ・タブレットから光の粒子がセイギズラーに放射され、それを受けたセイギズラーの顔からまた文字列が発射された。
『普通の荷物とは思えない、奇妙な荷物を持っていた』
またリブラが言った。 「それが、盗撮の証拠になる、と?」 理鉈がヘルマを見る。ヘルマはまた、同じワードを入力する。すると、今度は粒子はマナサマーヌへ向かう。光の粒子を受けたマナサマーヌから、赤色の光の粒子がその頭上に放射され、一つの形を作った。 それは、やや小ぶりのドローンに見えた。 理鉈がそれを見上げてから、ヘルマに聞いた。 「このドローンが証拠になるのですか?」 ドローンがスカートの内側を撮影した、という証拠になるとは思えない。そう思って、セイギズラーを見る。 セイギズラーはしばらく無言だったが、こんな文字を出した。
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