勤め先のパワーストーンショップ「エヴィエニス・ペトラ」の用務を終え、その帰り道、軽自動車の運転席から睛は四方真郁の姿を見留めた。場所は佐波木東高校の正門前だ。 路肩に車を駐め、睛は真郁に声をかける。 「マイクくん」 その声に、真郁がこちらに気づき、歩いてきた。 「睛さん、こんにちは。……ああ、ミークから聞きました、コンテスト入賞、おめでとうございます!」 「有り難う」 賞賛の言葉に、改めてわき上がった喜びとともに真郁に答えると。 「ねえ、ここで何しているの?」 真郁がグラウンドの方を見てから答えた。 「実は……」 盗撮の一件を聞き、今度は怒りの思いとともに睛は言う。 「ひどい話ね。で、犯人はわかってるの?」 「今、美郁が警察署に告発状を持って行っているんで、警察が動くと思います。だから、犯人もわかるかと」 「そう。そういう輩(やから)には、きっついお灸を据えないとね」 真郁も「うんうん」と頷く。 そして真郁は、また校舎の方を見て言った。 「実は、あの画像に、わずかに写っている背景を元にしてどの地点で撮られたものか、見ておこうと思ったんです。意味はないかも知れないんですけど、何かしないと落ち着かなくて」 「マイクくんは、本当にミークちゃんのことを大事に思ってるのね。そう言えば、ミークちゃんが『お兄ィはボクをどこへ持っていこうとしてるか、わからない』って言ってたわよ? ケイちゃんとか、リタちゃんは、マイクくんが『ミークちゃんアイドル化計画』を発動してるんだ、って言ってた。どうなの、その辺?」 本当にアイドルにしようと思っているのかは、別にして、確かに美郁は美少女だと思う。盗撮されたのも、頷ける話だ。 真郁が少し照れ笑いのようなものを浮かべて、頭を掻いて言った。 「まあ、アイドル化計画、っていうほど大げさなものじゃないんですけど。……ミークって、小学校低学年の頃って、本当に小さくて泣き虫だったんです。よくいじめられもしてて。同じ小学校に通っている頃は、俺も護ることが出来るけど、俺が卒業した後は、どうなっちゃうんだろう、って思って。そのとき思ったんです、ミークがアイドルになれば、注目する人も増えるだろうって。アイドルまでいかなくても、注目される存在になれば、誰かがミークを見守ってくれて、そうすれば誰もミークをいじめなくなるって。でも、それが却っておかしな輩を引き寄せちゃったみたいだけど」 「へえ、そこまで考えてたの。いいお兄さんね」 「いや、それほどでも」 と、真郁は、また照れながら頭をかく。 それを見て胸が温かくなったとき。
『……………………! これは、「ヒボウ」……?』
「ヒボウ」のエネルギーの流れが感じられてきた。 「じゃあ、マイクくん、遅くならないうちに、早く帰ってね」 「はい」とお辞儀をして、真郁は帰って行った。
それを見届け、睛はエンジンを切り、車から降りる。 どうやら、この近くで実体化するのか、周辺で漂っている「ヒボウ」の濃度が高くなっていっているようだ。 ふと、高校の校舎が気になってそちらに目をやる。 果たして、グラウンドの中央にエネルギーが収束し、竜巻になったかと思うと、一つの形を形成して、竜巻が霧散した。 そこにいたのは、カメラが胴体、右手が望遠鏡、左手が双眼鏡になっており、二本の脚を持った、全高五、六メートルほどの怪物。頸部の上に載っているのは、横向きにしたスマホのようなもの。画面に光点が両目のように輝いていた。 『セイギズラァァァァ!』 セイギズラーが吠える。 柵を乗り越え、睛はプリ・タブレットを構え、変身した
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