二人はダッシュし、セイギズラーの左右から迫る。しかし、その動きを計算したかの様にセイギズラーも動き、ジャスティスの方に走ってくる。 ジャスティスは背を屈め、セイギズラーと激突する直前、スライディングする。セイギズラーはそれをジャンプしてかわす。ジャスティスはリブラと衝突する前に左手で地面を叩いて制動をかけ、その勢いを利用して身をひねって起き上がる。 一方、セイギズラーは着地してこちらを向く。そして小刻みに身を震わせた。だが、いつもの様に吠えない。それはまるで。 そう、まるで……。 ジャスティスがリブラに言った。 「あのセイギズラー、ひょっとして言いたいことが言えない、とか?」 リブラも頷く。 「そうね、そんな感じがするわ」 セイギズラーが両腕の前腕部を震わせる。すると、そこから振動波のようなものが飛んできた! リブラがジャスティスの前に来る。そして胸の前で両腕を交差させ、両肩の円盤に手を当てて、そこから白いシルエット状の光を取り出す。そして片手にそれぞれ装備した、その光の円盤を盾にして振動波を防いだ。 その直後、プリ・タブレットにコードを入力し終えたジャスティスがリブラの背後から滑り出し、エネルギーを放射した。 「JUST・ICE(正義の氷結【評決】)ッ!!」 剣状のペンの先から発射されたブリザードは、セイギズラーを包み込み、氷塊の中に閉じ込める。だが! 氷塊が小刻みに震え、砕け散った! 氷の戒めを砕いたセイギズラーは、また吠えるのをこらえる様に小刻みに震え、ダッシュする。あっという間に間合いを詰め、ジャスティスに組み付くと、そのまま身をひねってジャスティスを投げ飛ばした。宙で身を回転させ着地したジャスティスが見たのは、背後から組み付かれて吊り下げられ、セイギズラーが発する振動波に苦しむリブラだった。 「リブラ!!」 ジャスティスはプリ・タブレットに入力する。 「DE・CIDE(【打倒の否定】を【決定】)ッ!!」 ジャスティスが発射した球弾は、連続して撃ち出され、あるものは回り込み、あるものはセイギズラーの膝に命中した。 この攻撃で、セイギズラーの戒めは解かれ、リブラが地に落ちる。きれいな着地とはならず、リブラは膝から崩れた。 「リブラ!!」 ジャスティスは駆け寄る。だが、向こうからもセイギズラーがやって来ていた。リブラの前に、突然、立ちはだかる様に現れたセイギズラーは左腕を突き出し、ジャスティスの首を掴むと、すくい上げる様に高く持ち上げた。そして衝撃波。 手を振りほどこうにも、全身をむしばむ痛みと痺れに、思う様に動けない。 だが、この苦しさの中でジャスティスは「ある動き」を理解した。 「○リキュア・リバティーソーサー!」 リブラの声とともに、ピンク色と水色に発光するフライングディスクが飛んできて、セイギズラーの腕に命中した! それぞれの光の火花を散らし、ディスクが爆ぜ、セイギズラーがジャスティスを離す。地に落下したジャスティスは、片膝立ちになり、咳き込む。 「大丈夫、ジャスティス!?」 「う、うん。ありがとう、リブラ」 立ち上がり、間合いをとるジャスティスは確信した。 「君が出す衝撃波、それは、君の心の慟哭そのもの。教えて!? 君が一体、何を言いたいのかを!?」 セイギズラーは何も答えない。
理鉈に急かされ、睛は軽自動車を街に向けて走らせていた。 だが、交通事情がどうもおかしい。この時間は、普段、混むはずのない道路が混雑して、車が進んでいないのが、家のある丘の上から下りる途中で見えた。どこかで事故でも起きたのだろうか? 理鉈が行きたいと言っている商店街への迂回路を走っていると。 「止めて!!」 理鉈が叫ぶ。 二車線の道路の、路肩に止める。理鉈が車を降り、路地に入った。 「ちょ、ちょっと理鉈ちゃん!?」 車をロックし、あとを追う。なぜか分からないが、理鉈が向かう方向に「イヤな何か」がある気がしてならないのだ。彼女を危険な目に遭わせるわけにはいかなかった。
そして、睛が見たものは。 「……なに、あれ……?」 大通りの中央に立つ、三つの影。二つは少女、もう一つは身長が三メートルはありそうな、服を着たマネキン。 いや。 胸にスマホの様なものをつけているが、あれは……。 「睛ちゃん、来ちゃダメ! 戻っ……て……」 何か言いかけた理鉈が、なにかに気がついた様に、じっと睛を見ている。なんだろう、と思っていたら、こちらに歩いてきて、理鉈が言った。 「睛ちゃんなら、使えるんじゃないかな、これ?」 そしてスカートのポケットから、背表紙部分にペンが挿してある手帳のようなものを出す。理鉈が、それを睛に差し出した。 「え? これって?」 なんとなく受け取る。次の瞬間、電撃のようにいろんな情報が頭の中を駆け巡った。 「……あ、……あ。理……鉈ちゃん、きみ、は、あの時、の……。いえ、それより、今……は……」 マネキンの様な怪物を見る。使命感が、睛の胸に燃え上がった。 「いいの、リタちゃん?」 リタがいつものような眠そうな表情ながらも、笑顔で頷く。 「うん。睛ちゃんなら……ううん、睛ちゃんしか使えないと思うの」 頷き返し、睛はペンを抜き、手帳を開いた。
|
|