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作品名:○リキュア Psy! Bang! Shock! 第四話 作者:ジン 竜珠

第8回   第四話 パンドラのほくそ笑み−8
『お前は昔、振り込め詐欺で、ばあちゃんからお金を奪った! そのせいで、ばあちゃんは……! 警察に捕まって罪を償った? 出し子だから、罪は軽い? バカを言うな! 俺は絶対にお前を赦さない! そんなお前がDoTuberになって、「特殊詐欺撲滅キャンペーン」だと? ふざけるのもたいがいにしろ!』

 リブラがジャスティスを見る。
「ねえ、これって……」
「……うん」
 理鉈がやって来た。
「これ」
 差し出された画面には、動画があり、「B4すいんどら」というDoTuberが、特殊詐欺撲滅キャンペーンをやるから協力して欲しい、ということを訴えていた。
 ジャスティスはマナサマーヌと、その周囲を取り巻く文字を見た。
「そうか……。捕まって、裁判で裁かれて、刑に服して。本人はそれでいいかも知れないけど、被害者の中には、それじゃ、納得できないこともあるんだ……」
 静かに理鉈が言った。
「多分、この被害者はその時の出し子がどうなったか、知らなかった。でも、特殊詐欺撲滅キャンペーン、っていうワードを偶然かどうか、何らかの方法で知って、そのキャンペーンを打っているDoTuberが、かつて自分たちを苦しめた出し子だということを知った。そういうことなんだと思うよ?」
 ふと気がついた様にリブラが言った。
「そうか、『すいんどら』って、『Swindler』、……『詐欺師』っていう英単語をもじったものなのかも? じゃあ、『B4』は『Before』……『昔、詐欺師をやってました』っていう意味だったのかな?」
 それは戒めか? それとも「昔、ヤンチャしてました」という、ふざけたイキがりか?
 マナサマーヌがうなだれて言った。
『申し訳ありません。償えないってことは分かっているんです。本当に申し訳ありません』
 そして、そのまま両膝をつく。マナサマーヌは光の塊のため、 表情までは分からないが、泣いているようにジャスティスには思えた。
『ふざけるなふざけるな! 何がDoTuberだ! ちやほやされて、いい気になってるだけじゃないか! 今度のキャンペーンだって、軽い気持ちでふざけているだけだろう!! 人の注目を集めて善人に思われたいだけだろう! カッコ付けたいだけだろう!!』
 その時、セイギズラーの氷塊がビリビリと振動を始めた。そして、壊れたスマホから次々とワードが飛び出した。

『そうだったのか』
『コイツの本名、苗字が違う』
『俺、調べた。元の苗字は……』
『チャンネル登録が多いと思っていい気になってる』
『悪人がDoTuberでこういうことをするのって、どうよ?』

 グルグルと巡る言葉に絡め取られるように、マナサマーヌがブルブルと震え、うずくまる。このままでは、まずいかも知れない。羽屋納総子がそうであったように、マナサマーヌに何かあったら、本体にも影響が出るのは間違いない。
 だが。
『今回の罪状は、何?』
 ジャスティスは戸惑った。過去三回のケースから考えて、セイギズラーは原告だ。では、原告が訴えているものは何か?
 唸っていると、何かに気づいたようにリブラが言った。
「ねえ、ジャスティス、情状証人の出廷を許可して!」
「……うん、お願い!」
 何が何だかよく分からないが、リブラに何者かが何かを伝えてきたようだ。
 リブラがプリ・タブレットから召喚状を喚び出し、投影すると大柄の人型の光が現れた。
 大柄の人型の光が言った。
『私は保護司をしている者です。確かに彼は十六年前、特殊詐欺の出し子をしました。その結果、あなたのおばあさまがご親族に責められ、一年後に自ら命を絶たれたことは悲劇でした。ですが、その時、彼は拘置所にいたのです。どうか、それを分かって下さい。それに、今回キャンペーンを打つようにアドバイスしたのは、私なんです。DoTuberとしてある程度、名前が売れた今なら、人の注目も集まって、多くの人が特殊詐欺について意識を向けてくれるのではないかと……』
 文字が吠える。
『黙れ黙れ黙れッ! そんなこと、関係ないッ!』
「!! そうか!」
 今のやりとりで、ジャスティスは多くのことに気づいた。そして一連のポーズの後、胸にある太極図を、白い方を打撃部分にしたハンマーに変える。そして宣言した。
「本件を、刑法第211条による業務上過失致死罪と認定します。しかしながら、本条の公訴時効は十年。すでに時効が成立しています。よって、原告の告訴を棄却、本件については被告人は無罪! ○リキュア・イノセントガベル!」
 ジャスティスがハンマーで被告人の人型を横殴りに殴ると、保護司の人型とともに、光の粒子になって空に吸い込まれていった。
『俺は、絶対に赦さない!』
 そう吠えて、原告の文字も消えた。


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