『セイギズラァァァァ!』 セイギズラーが吠え、右手にある電話の受話器を向ける。すると、そこから「若い男の声」がした。 『母さん、脚の骨を折って、病院に行かないとならないんだ。今すぐ振り込んで』 受話器から、リング状の光線が連続して射出され、ジャスティスを撃つ。よけそこなって、ジャスティスはその光線を浴びてしまった。 「うぐっ!? 脚が!?」 まるで骨折したかのように、鋭い痛みが走る。だが、それも一瞬のこと、ジャスティスは地面を転がり、ダッシュしてジャンプ、セイギズラーの右肩を蹴る。 『セ、セイ、ギ……ズラ』 間髪入れず、リブラがジャンプし、セイギズラーの左肩を蹴る。二人の蹴りで体勢を狂わせ、セイギズラーは仰向けに倒れた。 跳躍して宙で身をひねり、二人はセイギズラーの上に爆弾の如く着地する。 『セイギ……!』 苦鳴を上げたセイギズラーは、左手のガラケーを二人に向けて開く。また「若い男の声」がした。 『おばあちゃん、どうしよう、交通事故で相手に大怪我させちゃった!』 すると、まるで走行している自動車に衝突されたのではないかという衝撃が、二人を吹っ飛ばした。 たいしてダメージにはなっていないが、二人は吹っ飛ばされ、地に転がる。その勢いのまま、ガードレールにぶち当たる。 「あたたた……。大丈夫、リブラ?」 「ええ。でも、なんなの、あの攻撃? 音波兵器?」 「似たような物、かな?」 立ち上がったセイギズラーがこちらを向き、胸についた、横長方形のアイフォンから「若い女」の声を発した。 『電車で眠っちゃって、大事な小切手が入ったカバン、盗まれちゃった。助けて、おじいちゃん!』 アイフォンから輪郭がいびつな、輪ゴムのような光がいくつもいくつも発射され、二人を襲う。それを浴びた瞬間。 「あ、れ……? ね、眠い……」 「眠っちゃ、ダメ、ジャスティス……。死んじゃうよ……」 頭の中が痺れるほどの眠気が、ジャスティスを襲う。リブラも同じようだ。 これはまずい。 そうは思うが、眠気で立っていられない。思わず右膝をついた時。 光る何かが飛んできて、セイギズラーの胸にあるアイフォンを破壊した! 「ごめん、お待たせ!」 眠気も消え、声のした方を見ると、そこにいたのは理鉈。 「お前、アラヤの……!」 ミス・テイクが忌々しそうに理鉈を見る。 右手の人差し指の先に魔法の光を光らせながら、理鉈が、眠そうながらもニヤリとして言う。 「みんなで助け合うのが、私たちの正義よ」 「……フン、まあ、いいわ」 そう言って、ミス・テイクはバックステップのように後方に飛び、交通標識の上に腰掛けた。高みの見物を続けるらしい。 頭を振りながら、ジャスティスはセイギズラーを見る。 多彩な攻撃を仕掛けてくるが、共通項があった。それは。 「振り込め詐欺……」 「え? ジャスティス、今、何か言った?」 「セイギズラーが攻撃のたびに発するワードって、振り込め詐欺の手口なんだ」 「え? そうなの?」 「だとすると」 ジャスティスはプリ・タブレットを出す。そしてある単語を入力する。 『セイギズラァァァァ!』 セイギズラーが吠えて、右脚のスマホ画面を向けてきた。その刹那! ジャスティスは「RECORDING」と入力し終え「ENTER」を入力した。ジャスティスの周囲で光の粒子が高速で渦を巻いて、女性の声で言葉が流れ始める。 『この電話は、防犯のため、録音されます』 この言葉が、繰り返し流れる。 『セイギッ!?』 右脚のスマホから出かかっていた「何か」が、勢いよく引っ込む。 続けざま、ジャスティスは「JUST」「*」「ICE」と入力し、「ENTER」をペンでタップした。 「JUST・ICE(正義の氷結【評決】)ッ!!」 剣状のペンの先端からブリザードが撃ち出され、セイギズラーを氷漬けにした。頭頂部のスマホだけが、凍らずに残っている。 ジャスティスは被告人召喚の文書を喚び出し、照射した。そして文書が被告人のマナサマーヌになり、宙に浮くようにして出現する。シルエットからして、男性のように見える。 直後だった! 空間をつんざくような音をさせて、セイギズラーの頭頂部にあったスマホが砕け散り、光の粒子となって、マナサマーヌを取り巻いた! その粒子は文字になってグルグルとマナサマーヌの周囲を巡る。文字は、「声」となってジャスティスたちの耳に届く。その声が告げていたのは……。
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