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作品名:○リキュア Psy! Bang! Shock! 第四話 作者:ジン 竜珠

最終回   第四話 パンドラのほくそ笑み−10
 隣に希依が来て、笑顔で二人を見て言った。
「話はかわるんだけど。ギリシャ神話に、『パンドラの箱』ってあるじゃない? 昨日、その話を本で読んでて、ふと思ったの」
「何を思ったんだい?」と、美郁は尋ねる。
「パンドラは、好奇心に負けて箱を開けたって、なってるわよね? でも、パンドラはヘルメス神から狡猾な、つまり悪がしこい心を与えられてるの。そんな彼女が、例えば『開けてはいけない』っていう箱を与えられたら、どう考えると思う?」
 考えてみるが、美郁には見当がつかない。だが、理鉈には分かったらしい。
「開けるな、と言われたら、きっとパンドラなら開けるだろう。ゼウスはそう考えて、この箱を渡してきた、かな?」
「まさに、そう! それでね? それに気づいたパンドラは、どうしたと思う?」
 まるでわからない。理鉈も美郁に抱きついたまま、ゆらゆらと左右に揺れるばかりで、答えない。
 希依は首を傾げる仕草をして、笑みを浮かべて言った。
「夫のエピメテウスに開けさせたのよ、竜宮城の乙姫が浦島太郎に玉手箱を開けさせたように」
「ごめん、ケイちゃん、話がいきなり飛んじゃって、ボク、ついていけそうにないや」
 苦笑を浮かべて答えると、理鉈はやはり美郁に抱きついたまま、ゆらゆらと美郁を揺らして、言った。
「面白いねえ、どういうことか、聞かせて?」
「ゼウスは、開けられることを前提にして、箱を渡してきた。だから、箱が開かなかったら、奇異に思う。場合によったら、パンドラに何か仕掛けてくるかも知れない。だから、箱は開けられなくてはならない。でも、パンドラはゼウスの言葉に乗ってやるつもりはない。だから、愚鈍だといわれた夫、エピメテウスにうまいことを言って開けさせた。案の定、中からはあらゆる災厄が飛び出した。あわてて蓋を閉めたら、中に希望の予兆が残った。……エピメテウスっていう名前には『後になって知る』っていう意味もあるんだって。つまり、後の祭り、ってわけ。乙姫も、漁師の浦島太郎に漁で獲られてきた同胞の仇を取るために、『開けてはいけない』と言い含めて玉手箱を渡した。きっと開けるだろうと、想定して」
 そして、眼下の街並みに目をやる。
「ミークちゃん、リタ会長、私、この『パンドラの箱』って、インターネットのこともいってるんじゃないかって思うんです」
 理鉈がゆらゆら揺れながら言った。
「それは言えるかもね」
「はい。過剰な自己顕示欲、誹謗中傷、犯罪誘導……。ふたを開けると……ネットに繋ぐと、そんなものが噴き出してくる。パンドラの箱には、希望の予兆が残ったけど、インターネットに、それは、あるんでしょうか?」
 しばらく沈黙の時間が流れた。
 だが、それを美郁が破った。
「あるさ、きっと! そう信じようよ!」
 希依がまた、こちらを向いて小首を傾げるような仕草をして微笑む。
「そうね」
 その仕草を「かわいい。今度、真似してみよう」と思いながら頷くと、背後で理鉈が言った。
「今の話聞いて思ったけど。箱を開けさせたパンドラは、災厄がぶちまけられて、案外ほくそ笑んでたりしてね〜、人の不幸が楽しくて〜」
「マジで怖いからそんなこと言わないでよ、リタ会長」
 割と真面目な表情と声で美郁は応えた。

 火曜日。
 留衣は改めて、「B4すいんどら」に取材に行った。
「昨日は済みませんでした、なんだか、ガス漏れ事故があったみたいで」
 あれは自分がやったことだ、と思いながら、「かまいませんよ」と留衣は答える。ICレコーダーやタブレットの準備をしていると、不意に真面目な表情で「B4すいんどら」が口を開いた。
「あの!」
「はい? なんでしょうか?」
「取材の前に、是非、聞いていただきたい話があるんです」
「はあ。なんです?」
 なにやら思い詰めたような表情だったが、まるで自分に活を入れるように頷くと、「B4すいんどら」は言った。
「実は僕、十六年前に住んでた街で……」
 話を聞きながら、尾前川留衣ことミス・テイクは、心の中で舌打ちをした。
 取材テーマの内容が変わって面倒くさいと思いながら、留衣は適当に相づちを打っていた。


(○リキュア Psy! Bang! Shock! 第四話・了)


あとがき

 読了いただいた皆様、有り難うございました。
 今回も死にそうになりながら、どうにか生きてます。日本語、変ですか?

 Oh、スミマセ〜ン。ワターシ、ハルバル海ヲ越エテ、ヤッテキマシータ!
 マダ、コノ国ノ言葉、ヨクワカリマセ〜ン!

 ……うん、ごめんね。

 今回は「特殊詐欺」がモチーフでした(テーマはまた別にあります)。で、手口は他にもあるんですが、さすがに○リキュア相手に「痴漢で……」とか、「相手の女性を妊娠させて……」なんていうのはマズいので、出しませんでした(苦笑)。

 第一話で「浦田理鉈」の「リタ」には意味がある、って書かせていただいたことについて(「浦田」は、また、この先で)。この「リタ(rta※)」という言葉は、ヒンドゥーで「天則」を意味します。なので、「王様戦隊」の方で登場する「リタ・カニスカ」という名前について、この意味を知らずに名付けたとしたら、これはもう神がかった偶然だとしか言いようがないですね。
 リタ・カニスカは裁判長のようですから、「天則」というのはピッタリではないかと。

 それでわでわでわ〜。



※この場合、「r」の下に「・」がつきます。この「r」の下に「・」がつく文字は、ネイティブに近い発音では「ル」になるそうですが、欧米では慣例的に「リ」と発音するそうなので、日本でもそれにならって「リ」と発音しているそうです。なので「リタ」と発音します。


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