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作品名:○リキュア Psy! Bang! Shock! 第四話 作者:ジン 竜珠

第1回   第四話 パンドラのほくそ笑み−1
まえがき:今回は、メチャクチャ読みづらいです。ごめんなさい。


 土曜日。
 美郁と希依は佐波木市地方裁判所に来ていた。この日は、ある特殊詐欺事件で受け子をやった青年に対する、判決公判だ。母・育恵が検察官として携わっている事件であり、本当なら前回の裁判も傍聴したかったが、希依と二人して抽選に漏れてしまった。
 今回は、二人揃って抽選に当たり、傍聴できたのだ。ひょっとしたら、○リキュアの特殊能力では?と思ってみたりする。
 時間になり、裁判長、左右陪席(さゆう ばいせき)、そして男女合わせ六人の裁判員、男女合わせ三人の補充裁判員が入廷してきた。
「あれ? ケイちゃん、左陪席(さゆう ばいせき)の人、替わったみたいだね?」
 これまで左陪席(向かって右側、つまり裁判長の“左”側に座る判事補)は、眼鏡をかけた、ちょっと神経質そうな若い男性だった。だが、今いるのは、年齢としては前の男性とあまりかわらないようだが、風貌はかなり異なる。長いえり足を紐でくくったイケメン。まるで判事補に見えない。
 うなずき、希依が言った。
「うん。なんか、司法修習生やってたとか思えない感じの人ね。どこかでメンズ地下アイドルのアルバイト、やってるんじゃないの?」
「いや、さすがにそれはないでしょ……」
 しかし、傍聴席にいる数人の若い女性たちは、この男性に一瞬にして魅了されたらしいことが、かすかに聞こえる会話や呟きなどから知れた。ここがライブ会場なら、黄色い声に変わっていることだろう。
 美郁が、やや呆れながら応えると、裁判長(三十代後半に見える、静謐な印象のある人物だ)が裁判の開廷を宣言する。右陪席(三十代前半に見える、ボブカットの女性だ)を見ると、いつものようにキリと唇を結んでいる。
 この右陪席の人物は、あくまで美郁の印象だが、よくできるビジネスレディのような感じが漂っている。母の話では通常、左陪席が判決の起案文書を作成するということだそうだが、ここでは右陪席が作っているのではないかという、「仕事の出来る女性」感が漂ってくる。
「それでは判決を申し渡します。被告人、前へ」
 裁判長に呼ばれ、今回の事件の被告人が証言台に立つ。裁判長が被告人に対して人定質問(被告人の身元・身上に間違いがないか、質問すること。刑事訴訟規則第百九十六条により、公判の冒頭で行うことが義務づけられている)を行った。ここの裁判長は判決公判でも、人定質問を行っている。
 人定質問に被告人が答えると、裁判長が厳かに言った。
「では、判決を申し渡します。主文、被告人を懲役三年三月(さんねんさんげつ)の刑に処す。これに未決勾留日数(みけつこうりゅうにっすう)のうち五十日を算入するものとする」
 法廷内がザワついた。そして美郁も、希依も顔を見合わせ、困惑の表情を浮かべる。ふと検察官席にいる母を見ると、母ですらもギョッとしたような、訝しげな表情になっていた。
 美郁は、心の中で呟いた。

 ウソだろ? 報道じゃ、求刑は懲役二年八月。なんで、求刑よりも判決の方が量刑が重いわけ!?

「静粛に!」
 ざわついた法廷内に、裁判長の声と木槌(ガベル)で打撃板(サウンドブロック)を二度、打つ音が響く。水を打ったように静かになった法廷内で、再び裁判長の声が響いた。
「理由を述べます。被告人は着席して下さい」
 被告人が椅子に座る。だがそれは、座るというより、ショックで脱力し、尻餅をついたように美郁には見えた。


「理由。本件はいわゆる特殊詐欺であり、善良な市民に虚偽の申告をして不安ならしめ、金銭を詐取(さしゅ)する卑劣な犯罪である。起訴状並びに弁護人による最終弁論の通り、被告人は初犯であり、主犯格に脅されてやむなく本件に関わったという点には同情するべきところもあるが、そもそもの関わりが俗に言う美人局(つつもたせ)で主犯格の罠にはまったという、極めて個人的欲望にもとづいたものであり、この点において強い自制心さえあれば本件に関わることはなかったと推量される。また、二十一歳という被告人の年齢を鑑みれば、本件への関与を命じられた時点でその犯行態様についての知識、及び非人間性に考えが及んだはずであり、警察に通報することも出来たはずである。金銭授受の場で薄笑いを浮かべていたという、善意の第三者による証言も無視できない。この薄笑いにこそ、被告人の人間性が集約されていると断じるべきであり、再犯の怖れが十二分にあると、ここに結論するものである。被告人及び被告人の家族の資力を考慮するに、弁済の意志があるとはいえ、長期に及ぶであろう被害金額であり、未だ、示談は成立しておらず、被害者の処罰感情も強い。これをもって、判決の理由とするものである」


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