『私も、同じ目に遭ったことある。腐ってるよね』 『辛かったね、きのみん』 『私だったら、その偉い人、殴ってるかも』 『耐えられないなあ、私なら』 『ごめんね、きのみん』 『ゴメン』 『ごめんね』
リブラはジャスティスを見る。 ジャスティスが頷いた。 そして彼女が言った。 「判決を言い渡します。でも、その前に」 と、セイギズラーを睨む。 「原告の名誉毀損罪について、審理に入ります!」 ジャスティスのティアラにある五つの宝玉が、めまぐるしく明滅する。そして、四つの宝玉が点灯した。どうやら、名誉を毀損する目的ではなく、本当に不当行為について断罪するつもりでネットに書き込んだ者も、相当数いたようだ。 「主文。原告の名誉毀損罪が成立!」 一連のポーズをとると、紫色の打撃部分を持ったハンマーを手に、ジャスティスが空高く跳び上がる。 「You are Guilty! ○リキュア・グレートガベル!」 ジャスティスがハンマーでセイギズラーを叩く。 『ゴメンナサ〜イ』 と言いながら、セイギズラーは光の粒子になって消滅した。 次に、ジャスティスは正座しているように見えるシルエットに向いた。その表情は哀しげだ。 「被告人に判決を言い渡します。その前に、伝えたいことがあります」 そして大きく息を吸い込んで言った。その瞳に光るのは、涙か? 「どうか、勇気を持って下さい! あなたは被害者です、そのことを周りの人に伝えて下さい! 誰か一人に伝えて、その一人と一緒に、また別の一人に伝えて。きっと、何かが変わります!」 そして、ガベルを太極図に戻し、今度は紫の勾玉を上にして引っ張り、ポールを引き出す。先刻ハンマーの鎚部分だった紫の勾玉の尾をポールに接続すると。 「主文。勇気を持って下さい! ○リキュア・ブレイブガベル!」 今度は白い鎚部分でシルエットを横薙ぎにする。シルエットが粒子となって消えるが、その様子は柔らかく、消える寸前、「ありがとう」とシルエットは確かに言った。 ハンマーを地に打ち付け、ジャスティスは静かに宣言した。 「これにて、閉廷」
美郁が変身を解くと、同じく変身を解いた希依が歩み寄ってきた。 「ケイちゃんも○リキュアになれたんだね、やっぱり」 「やっぱり?」 と、希依が不思議そうな表情になる。 「うん。ヒボウのエネルギーを感知出来たケイちゃんなら、きっと○リキュアになれると思ったんだ、ボク。だから生徒会長に話したんだ」 「そう」 と答えてから、希依は言った。 「ミークちゃん、『ダモクレスの剣』って知ってる?」 「え? ごめん、知らないや」 苦笑いをして希依は言った。 「ギリシャ神話にある話なんだけど。ある王様の繁栄をうらやんだダモクレスっていう家臣が、王様に玉座に座らせてもらったの。すると、その頭上には今にも切れそうな糸で剣が吊されていることに気づいたの。このお話は、繁栄の影には、常に命の危険が伴う、っていう教訓なんだけど」 と、ここでいったん言葉を止める。 「私、昨日のこと見てて、思ったの。○リキュアってとても大きな力。だからこそ、慎重に使わないとならない」 理鉈から聞いた、羽屋納総子のことが脳裏に浮かぶ。 「ちょっとニュアンスは違うんだけどね? その大きな力を使う○リキュアにも、同じようなものが必要だなって、思ったの」 「同じようなもの?」 「うん。常に剣に狙われている、大きな力の行使者・○ュアジャスティス。間違ったことをしたら、容赦なく突き刺さってくる剣・○ュアリブラ。ミークちゃん、私が、ミークちゃんにとっての『ダモクレスの剣』になるわ」 希依のその言葉と笑顔に、美郁は心強いものを感じつつ応えた。 「ありがとう、ケイちゃん! ボク一人じゃ、荷が勝ちすぎてるって、思ってたんだ! よろしく頼むよ!」 綺麗な声を立てて、希依が笑う。 「お疲れ〜」 と、いつものように眠そうな表情の笑顔で歩み寄ってきた理鉈は、美郁と希依、二人の肩に抱きついて言った。 「これから、よろしくね、ミークちゃん、ケイちゃん」 美郁は希依と顔を見合わせ、理鉈に笑顔で頷いた、その時だった。
|
|