ダンザインたちが根城にしている謎の洋館。そのダイニングにドクゼーン、ブランダー、ミス・テイクの三人がいる。今は、夕刻のようだ。ドクゼーンは席についてワイングラスを手にし、ブランダーは壁に背を預けて腕を組み、ミス・テイクは透き通った紫色の飲み物が入ったグラスを手に窓外の景色を見ている。 ブランダーが二人を見る。 「ちょっとおもしろいことを思いついたんでな、俺はしばらく人間界とここを行ったり来たりする」 「あら? 偶然ね、私もおんなじことを、言おうと思ってたの。というわけで、私も行ったり来たりするわ。なんなら、向こうに拠点を設けるかも知れない」 ドクゼーンは軽く笑う。 「いいだろう。我らの目的は、あくまで真実の『正義』を掴むこと。そのための行動なら、私に断りを言う必要はない。好きにしろ」 「……恩に着る。ドクゼーン、あんたがいなかったら、俺はとっくの昔に死んでいた」 「私も、アイツらに殺されてたわ」 そう言って、二人は影のように姿を消した。 ワインを飲み干し、ドクゼーンは呟いた。 「さて。私も○リキュアに挨拶をしておこうか」
昼食。 ここ、佐波木第一中学は学食を完備している。もちろん、弁当などを持参しても良い。ちなみに美郁は希依とともに学食派だが、二、三日に一度は真郁が弁当を用意する。無下に断るわけにもいかず、そういう日は同じ弁当持参のクラスメイトと一緒に、教室や中庭などで食べていた。 そしてここ数日で、美郁は気づいたことがある。
あの子、また独りだ。
メガネをかけたセミロングヘアの、地味な感じの女子。美郁はベンチに腰掛けているが、その女子は十メートル以上先の花壇の脇にある煉瓦の縁(ふち)に腰掛けている。そして、どこか寂しそうにボソボソと菓子パンとジュースで食事をしているのだ。 遠いため学年章は見えないが、雰囲気的に下級生ではないように思う。 なんとなく、気になる女の子だったが、声をかけるほどでもないようにも思えた。
放課後、適当な理由をつけ美郁は希依とは帰らず、生徒会室に来た。 部屋には、理鉈しかいない。今の時期、特に行事もないことからこの生徒会本部に入り浸っているのは理鉈しかいない。 「リタ先輩、ケイちゃんなんですけど」 「うん、どうしたの?」 美郁は前日の件の報告とともに、希依がセイギズラーからヒボウのエネルギーを感知したらしいことを伝えた。 「なるほどねえ。……もしかしたら、ケイちゃん?だっけ? 彼女にも素質があるかも知れない」 「それじゃあ、ケイちゃんも○リキュアに変身できるってことですか?」 「それは実際に見てみないと」 「そうですか。じゃあ、今度、セイギズラーが現れた時に……」 美郁がそう言うと、苦笑いを浮かべて理鉈は答えた。 「向こうがこっちの都合に合わせてくれたら、助かるねえ」 「あー。……そうですよねえ」 根本的なところだった。相手がいつ襲撃してくるかというのは、きちんとスケジューリングされている訳ではないのだ。 「予告してくれるといいんですけど」と、美郁も苦笑いで頭を掻いた。
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