20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:○リキュア Psy! Bang! Shock! 第三話 作者:ジン 竜珠

第2回   第三話 ダモクレスの剣(つるぎ)−2
 学校に到着し、教室に入ってすぐに目に入ったのは、廊下側の列、一番後ろに座っている男子生徒のスマホ画面だった。それは、ニュース。美郁も、朝、テレビのニュースで見たものだった。だが、あまりに不謹慎で、美郁自身はその画面から目をそらしたのだが。
 その席には、男女あわせて四人がいた。皆、口々に「スゲー」などと言っている。何が楽しいのか、「おおー!」と言いながら笑顔になっている者もいる
 そのニュースは前夜、遠方の県にある都市で起きた、死者が出た火災だった。
 不快な気持ちを隠すことが出来ず、思わず美郁は言った。
「君たち、不謹慎だろ?」
 その声に、五人が美郁を見る。二人いた女子がそれぞれ「四方さん、おはよう」と言っているが、応える気分ではない。
 スマホを持った男子がキョトンとなっている。
「君たちが見てるのは、昨日の夜起きた、火事だよね?」
 スマホを持った男子が「そうだけど?」と答えると、目つきが険しくなるのを感じながら美郁は言った。
「この火事では亡くなった方も出てる。今、君たちが見ている、まさにその炎の中で、人が亡くなっていってるんだよ? なんとも思わないのかい?」
 その言葉に、五人が何かに気づいたように鼻から息を漏らす。先刻「おおー!」と笑顔になった男子は、バツが悪そうに、よそに視線を泳がせた。
 男子がスマホのボタンをタップして、画面を切り換えた。それを確認した、という訳ではないが、美郁はそのまま歩いて自分の席に着く。すると。
「ミークちゃん、ミークちゃん」
 と、希依がややトーンを下げた声で言った。
「なに、ケイちゃん?」
「……あんまり、ああいうこと言わない方がいいよ?」
「なんで? ボクは間違ったことは言ってないつもりだよ?」
「うん、それがマズいかな? みんながみんな、物わかりがいい訳じゃないし。かえって反感、買うから」
「そうなんだ。つまんないクラスだね」
 心の底からそう思って、そんなことを言うと。
「だから、そういうのがよくないの! ……昨日も、変なのがいたし」
「え? 昨日?」
 思わず、心臓の鼓動が跳ね上がった。昨日といえば、羽屋納総子がらみのセイギズラーと戦ったあと、希依に目撃されたのだった。どうやら○リキュアが持つ魔法力のようなもので、美郁が○ュアジャスティスだと分からなかったようだが。
「な、何があったの?」
 ドキドキしながら聞くと、希依は周囲を気にしながら、相変わらず下げたトーンで話した。
「昨日、あれからミークちゃんを追っかけて中央公園へ行ったの。途中で、何度か赤信号に引っかかったんだけど。それでね? 行ったら、変な怪物がいて、白い人影が宙に浮いてて、で、不思議な格好の女の子がいたの」
 それぞれ「セイギズラー」「羽屋納総子の心を象徴するシルエット」「○ュアジャスティスすなわち美郁」だろう。
「どういう状況だったのかよく分からないけど、怪物からすごく嫌な『何か』が流れてきてたの。それで、白い人影を見たら、家庭ではモラハラで苦しんで地獄だった、みたいなメッセージがその周囲を回ってて、私の心にもその苦しみが流れ込んできた。色んな事情と苦しみが流れ込んできて、私もとても苦しくて、なんとか救ってあげないと、って思ってたら、不思議な女の子が怪物と一緒にハンマーで白い影を破壊したの。私、その女の子に白い影の思いを訴えたんだけど、すごいスピードで逃げて行っちゃって」
「そ、そう、なんだ……」
 顔が熱くなり、額に嫌な汗がにじんでくる。
「ミークちゃんは、あんな風になったらダメよ?」
 ダメも何も、もう手遅れだ。というか、本人だ。
「そう言えば、ミークちゃんはどこへ行ってたの? 中央公園にはいなかったみたいだけど?」
「う、うん、公園には行ってないよ?」
 そう答えるよりほか、なかった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 182