20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:○リキュア Psy! Bang! Shock! 第二話 作者:ジン 竜珠

最終回   第二話 アストライアの帰還A−7
「どういうことなの!?」
 聞き覚えのある女の子の声に振り返ると、公園の入り口に一人の女子。
 それは葉苅希依だった。
 なんということか、どうやら美郁を追いかけてきていたようだ。だが、戦いに巻き込まなくてよかった。
 そう思って口を開きかけた時。
「あなた、何者なの?」
 険しい表情で希依が問う。
「え? なに、言ってるの?」
 もしかすると、変身すると魔法のようなモノで、その人物に対する認識力が惑わされるのだろうか?
 困惑していると、希依が聞いた。
「さっきの白い影、あれは羽屋納総子さんよね? あれをハンマーで叩き壊したのは、なぜ?」
「え? だって、彼女は多くの人たちに経済的損失を与えたんだ、自分の欲望を優先させた結果、ね。許せる訳ないだろ?」
 眉を吊り上げ、震えながら希依は言った。
「あなた、彼女の言い分、ちゃんと聞いたの!?」
「え? ……でも、彼女は何も……」
 希依が首を横に振る。
「言わなかったんじゃなくて、言えなかったの! 彼女は、長年、夫のモラハラに苦しめられてきたの!」
「………………え?」
 かすかな衝撃がジャスティスの胸を突く。
「でも、彼女の家は昔、夫の実家の人にお世話になったから! だから言えなくて! 苦しくて! だから外に違う居場所を作ってしまったの!」
「!」
 ジャスティスの胸が苦しくなる。先に見逃してしまった文字列、あれは彼女の本当の心だったのではないのか?
 涙を浮かべ、希依は続ける。
「確かに不倫は、いけないこと! 絶対にやっちゃいけない! でも、唯一、心の安らげる家庭が地獄だったら、どうしたらいいの!?」
 なんてことだろう、情状酌量の余地はあったのだ。もしあの文字列に注意していれば、彼女の夫を証人として喚問できたのだ。シルエット状態なら、ウソはつけない。それをしていれば、羽屋納総子を、あそこまで断罪することはなかった。
 実体の羽屋納総子は、どうなってしまうのだろうか?
 いたたまれなくなり、ジャスティスは希依に背を向けて、駆け出した。林を飛び越え、道を走る。ひとけのないところで変身を解き、自己嫌悪を抱きながら、家に着いた。ふと、高さ一メートルの木の柵で仕切られ、六、七メートルほど離れた隣家を見る。
「あれ? 確かこの家、空き家だったよね?」
 ここに引っ越してきた時は、あの家は空き家だった。だが今は窓が開き、生活音がしている。
「誰か越してきたのかな?」
 なんとなく見ていると、ドアが開いて一人の女子が出てきた。その女子は。
「え? 理鉈先輩?」
 理鉈だった。
「やあやあミークちゃん。この度、ここに引っ越してきました。今夜、正式にご挨拶に行くんで、よろしくね」
「え、ええ。それはいいんですけど。引っ越してきたって。え? そもそも異世界から来たんですよね? 前はどこに住んでたんですか?」
 だが、それには応えず、理鉈は言った。
「そうそう、『いとこ』と一緒に暮らしてるんだ。ちょっと待っててね」
 そして家の中に引っ込み、一人の長身の人物を連れてきた。ワイシャツにデニム姿、ボブヘアのスレンダーな人物だ。清潔な印象の美女といっていい。
 微笑んでその人物が言った。
「わたし、大羽 睛(おおう しょう)っていいます。あなたよね、ミークちゃんって? リタちゃんから聞いてるわよ。転入生なんでしょ? 困ったことがあったら、遠慮なくリタちゃんを頼ってね。わたしからも、リタちゃんに言っとくから」
 そして「大羽睛」と名乗る人物は、荷ほどきの続きをするために、家の中に戻っていった。
 まず思ったのは。
「理鉈先輩、あの人、こっちの世界の人間ですか?」
 異世界人のリタの「いとこ」なら、こっちの世界の人間ではないだろう。
 いつものような眠そうな笑みでリタは応える。
「いきなり、ストレートパンチを打ってきたねえ、ミークちゃん。大丈夫、こっちの世界の人間よ。魔法で、私とは親戚関係だって思わせているんだ」
「魔法って……。使えたんですか、魔法?」
「うん、数も種類も少ないけどね。こっちの言葉も、魔法で覚えたんだよ?」
「そうなんだ。じゃあ、さっきの人は?」
 家の方を振り返り、理鉈は言った。
「ちょっと訳ありなんだけど。でも、悪い人じゃないよ?」
「ええ、なんとなくそういう印象は感じました。学生には見えなかったんですけど、何している人ですか?」
「短大を卒業して、今、宝飾デザイナーの勉強をしているんだ。だから、そのうち、睛ちゃんデザインのジュエリーが店頭に並ぶかもね」
 美郁は睛が入って行った家を見る。
「素敵なお姉さんですね」
 理鉈が自慢げにピースをしてみせる。
「いいなあ。ボクもアニキじゃなくて、お姉ちゃんがよかったなあ」
 心からの声であった。
「まあ、そういうわけだから。こっちに引っ越してきたのも、ミークちゃんをサポートするため。よろしくね、お隣さん」
「こちらこそ」
 美郁は、笑顔で応えた。


 かつて人類は、神々とともに、平和で満ち足りた世界に生きていた。
 これを、黄金時代という。
 だが時代が下り、人々の中に邪(よこしま)な心が芽生えて争いを始めると、神々は失望して去って行った。
 その中で、ただ一柱の女神だけは地上に留まり、人々に正義を説き続けた。
 だが、あらゆる悪行が蔓延し、人々は他国の侵略に乗り出し、殺戮をためらいなく行うようにさえなった。
 遂に女神も失望し、地上を去ったという。

 その女神の名はアストライア。正義の女神テミスの娘である。
 今、テミスの導きにより、一人の少女が○リキュアとなった。
 彼女は正義を護るために戦う。

 アストライアとなって。


(○リキュア Psy! Bang! Shock! 第二話・了)


あとがき

 エルちゃん、かわいい。

 じゃなくて!

 どうも、読了いただいた方、誠に有り難うございました。
 いやあ、なんといいましょうか、テレビ放送でいえば、視聴率はほぼ1%に近いですよ。

 書きたいテーマは他にもあったんですが。

 まあ、打ち切りが妥当ですかね?
 ちょっと考えてみます。

 それに、最近は年のせいか(笑)、一行一行、書くごとに、命が削れていくのが実感できるんですよ。別のサイト様でも、連載を続けてたりブン投げてたりするので、これ以上、かかえ込まない方がいいのかも知れません。

 もしかしたら続けさせていただくかも知れませんが、ここで一区切り、ということで。


← 前の回  ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 184