「どういうことなの!?」 聞き覚えのある女の子の声に振り返ると、公園の入り口に一人の女子。 それは葉苅希依だった。 なんということか、どうやら美郁を追いかけてきていたようだ。だが、戦いに巻き込まなくてよかった。 そう思って口を開きかけた時。 「あなた、何者なの?」 険しい表情で希依が問う。 「え? なに、言ってるの?」 もしかすると、変身すると魔法のようなモノで、その人物に対する認識力が惑わされるのだろうか? 困惑していると、希依が聞いた。 「さっきの白い影、あれは羽屋納総子さんよね? あれをハンマーで叩き壊したのは、なぜ?」 「え? だって、彼女は多くの人たちに経済的損失を与えたんだ、自分の欲望を優先させた結果、ね。許せる訳ないだろ?」 眉を吊り上げ、震えながら希依は言った。 「あなた、彼女の言い分、ちゃんと聞いたの!?」 「え? ……でも、彼女は何も……」 希依が首を横に振る。 「言わなかったんじゃなくて、言えなかったの! 彼女は、長年、夫のモラハラに苦しめられてきたの!」 「………………え?」 かすかな衝撃がジャスティスの胸を突く。 「でも、彼女の家は昔、夫の実家の人にお世話になったから! だから言えなくて! 苦しくて! だから外に違う居場所を作ってしまったの!」 「!」 ジャスティスの胸が苦しくなる。先に見逃してしまった文字列、あれは彼女の本当の心だったのではないのか? 涙を浮かべ、希依は続ける。 「確かに不倫は、いけないこと! 絶対にやっちゃいけない! でも、唯一、心の安らげる家庭が地獄だったら、どうしたらいいの!?」 なんてことだろう、情状酌量の余地はあったのだ。もしあの文字列に注意していれば、彼女の夫を証人として喚問できたのだ。シルエット状態なら、ウソはつけない。それをしていれば、羽屋納総子を、あそこまで断罪することはなかった。 実体の羽屋納総子は、どうなってしまうのだろうか? いたたまれなくなり、ジャスティスは希依に背を向けて、駆け出した。林を飛び越え、道を走る。ひとけのないところで変身を解き、自己嫌悪を抱きながら、家に着いた。ふと、高さ一メートルの木の柵で仕切られ、六、七メートルほど離れた隣家を見る。 「あれ? 確かこの家、空き家だったよね?」 ここに引っ越してきた時は、あの家は空き家だった。だが今は窓が開き、生活音がしている。 「誰か越してきたのかな?」 なんとなく見ていると、ドアが開いて一人の女子が出てきた。その女子は。 「え? 理鉈先輩?」 理鉈だった。 「やあやあミークちゃん。この度、ここに引っ越してきました。今夜、正式にご挨拶に行くんで、よろしくね」 「え、ええ。それはいいんですけど。引っ越してきたって。え? そもそも異世界から来たんですよね? 前はどこに住んでたんですか?」 だが、それには応えず、理鉈は言った。 「そうそう、『いとこ』と一緒に暮らしてるんだ。ちょっと待っててね」 そして家の中に引っ込み、一人の長身の人物を連れてきた。ワイシャツにデニム姿、ボブヘアのスレンダーな人物だ。清潔な印象の美女といっていい。 微笑んでその人物が言った。 「わたし、大羽 睛(おおう しょう)っていいます。あなたよね、ミークちゃんって? リタちゃんから聞いてるわよ。転入生なんでしょ? 困ったことがあったら、遠慮なくリタちゃんを頼ってね。わたしからも、リタちゃんに言っとくから」 そして「大羽睛」と名乗る人物は、荷ほどきの続きをするために、家の中に戻っていった。 まず思ったのは。 「理鉈先輩、あの人、こっちの世界の人間ですか?」 異世界人のリタの「いとこ」なら、こっちの世界の人間ではないだろう。 いつものような眠そうな笑みでリタは応える。 「いきなり、ストレートパンチを打ってきたねえ、ミークちゃん。大丈夫、こっちの世界の人間よ。魔法で、私とは親戚関係だって思わせているんだ」 「魔法って……。使えたんですか、魔法?」 「うん、数も種類も少ないけどね。こっちの言葉も、魔法で覚えたんだよ?」 「そうなんだ。じゃあ、さっきの人は?」 家の方を振り返り、理鉈は言った。 「ちょっと訳ありなんだけど。でも、悪い人じゃないよ?」 「ええ、なんとなくそういう印象は感じました。学生には見えなかったんですけど、何している人ですか?」 「短大を卒業して、今、宝飾デザイナーの勉強をしているんだ。だから、そのうち、睛ちゃんデザインのジュエリーが店頭に並ぶかもね」 美郁は睛が入って行った家を見る。 「素敵なお姉さんですね」 理鉈が自慢げにピースをしてみせる。 「いいなあ。ボクもアニキじゃなくて、お姉ちゃんがよかったなあ」 心からの声であった。 「まあ、そういうわけだから。こっちに引っ越してきたのも、ミークちゃんをサポートするため。よろしくね、お隣さん」 「こちらこそ」 美郁は、笑顔で応えた。
かつて人類は、神々とともに、平和で満ち足りた世界に生きていた。 これを、黄金時代という。 だが時代が下り、人々の中に邪(よこしま)な心が芽生えて争いを始めると、神々は失望して去って行った。 その中で、ただ一柱の女神だけは地上に留まり、人々に正義を説き続けた。 だが、あらゆる悪行が蔓延し、人々は他国の侵略に乗り出し、殺戮をためらいなく行うようにさえなった。 遂に女神も失望し、地上を去ったという。
その女神の名はアストライア。正義の女神テミスの娘である。 今、テミスの導きにより、一人の少女が○リキュアとなった。 彼女は正義を護るために戦う。
アストライアとなって。
(○リキュア Psy! Bang! Shock! 第二話・了)
あとがき
エルちゃん、かわいい。
じゃなくて!
どうも、読了いただいた方、誠に有り難うございました。 いやあ、なんといいましょうか、テレビ放送でいえば、視聴率はほぼ1%に近いですよ。
書きたいテーマは他にもあったんですが。
まあ、打ち切りが妥当ですかね? ちょっと考えてみます。
それに、最近は年のせいか(笑)、一行一行、書くごとに、命が削れていくのが実感できるんですよ。別のサイト様でも、連載を続けてたりブン投げてたりするので、これ以上、かかえ込まない方がいいのかも知れません。
もしかしたら続けさせていただくかも知れませんが、ここで一区切り、ということで。
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