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作品名:○リキュア Psy! Bang! Shock! 第二話 作者:ジン 竜珠

第6回   第二話 アストライアの帰還A−6
 セイギズラーは四本の腕を持っている。右の上にある手から包丁が現れた。それを避けるも、左の上の手からメタルブルーのモールが出現し、ジャスティスを戒める。そして包丁を振り下ろしてきた!
 それをなんとか避け、ジャスティスは考える。それはほんの一、二秒。
「てぇぇぇぇぇぇぇい!」
 気合いとともにジャスティスはその場でクルクルと、まるで風車のように宙で横回転を始めた。見る見るうちにモールが巻き取られ、よじれ、回転するジャスティスに引き寄せられていく。
『セ、セイギ……』
 呻くと、セイギズラーが一気にジャスティスを引っ張った。今度はジャスティスの方が引き寄せられたが、宙に浮いたジャスティスは脚の踏ん張りをなくし、今度は逆に回転を始めた。そしてそのままセイギズラーに引き寄せられたジャスティスは、逆回転によって生まれた力を使ってモールから脱出し、セイギズラーの頭部を足場にして、高くジャンプした。
 そして、宙で身をひねり、セイギズラーの手の包丁を蹴り落とす。着地して、そのまま身をひねり、ジャンプしてセイギズラーにパンチを浴びせようとしたが、左の下の手に出現した鍋の蓋が盾になって、弾かれてしまった。
 弾かれて着地したジャスティスが見たのは、右の下の手に出現した手の大きさに比例して巨大な、様々に色が変化するオーナメントボール。
 投げつけられたボールを避けたジャスティスの背後で、爆発が起きる。あのオーナメントボールは爆弾のようだ。
 再びセイギズラーが、オーナメントボールを出現させる。
「冗談じゃない!」
 あわててジャスティスはセイギズラーの背後に回り込む。だが、セイギズラーは四本の脚を器用に使い、まるで戦車の超信地旋回(ちょうしんちせんかい)をしてこちらを向く。
「え!?」
 驚いている間に、セイギズラーがオーナメントボールを投げつけてくる。両腕を交叉させてブロックしたが、爆発の衝撃でジャスティスは吹っ飛ばされた。
「カハッ!」
 痛みはないが、爆発の衝撃が全身に伝わり一時的に体が痺れる。
 どうにか立ち上がり、ジャスティスは一計を案じる。ダッシュし、セイギズラーの周囲を高速で走って回る。
 セイギズラーも、新たなボールを出現させ、こちらを向こうとする。追いついた頃に、急制動をかけて逆に走って回る。セイギズラーもこちらの方を向こうと、超信地旋回でグルグルと回る。
 何度か回転、逆回転、また逆回転を繰り返すうち。
『セ、セイ、セイギャ……』
 セイギズラーがフラフラし始めた。どうやら目を回したらしい。セイギズラーという一点を見ていたジャスティスは、目を回すことはないのだ。
「よし!」
 また急制動をかけ、ジャスティスはセイギズラーに向かう。途中でペンを抜き、タブレットを出して「SHOCK WAVE」と入力した。
 セイギズラーの真下に、スライディングして潜り込む。胸の中央の太極マークが高速回転した。
「ハアァァァァァァ!」
 気合い一閃、一気に伸び上がって、掌底の手首側を合わせ、衝撃波を撃ち出す!
『セイギズラァァァァァァァ!』
 空高く舞い上がって、セイギズラーは地に倒れた。
 セイギズラーが弱ったのを確認し、ジャスティスは被告人を召喚する。
 書類が宙に投影され、一つの白いシルエットに変わる。それは女性。羽屋納総子であることは、間違いなかった。
「被告人に質問します。あなたは容疑を認めますか? それとも否認しますか?」
 ジャスティスの問いに、シルエットが答えかけた時。
「え? これは?」
 シルエットを取り巻くように、多くの文字列が現れたのだ。その中身は。

『イメージダウンもいいところだ。多くの仕事が流れた』
『CMもバラエティ番組も、契約打ち切りだ』
『違約金がどれだけになると思ってる!?』
『我々株主も、大損失だ。どうしてくれる!?』

 ダンザインが作った掲示板への書き込みこそなかったが、今回の不倫騒動で経済的損失を被った人が、多数いたようだ。同じような文字列が次々に現れ、シルエットの周りをグルグルと取り巻いていく。
 これはどうあっても有罪は免れない。不倫とあわせ、被告人のみを罰するべきか……!
 だが!
 ジャスティスはセイギズラーを見る。もはや戦闘能力は残っていないようだが、裁かねばならない。
 ジャスティスはもう一度、シルエットを見た。その時。
「あれ?」
 一瞬だが、他の文字列とは色の違う文字列が現れていたように思えた。だが、それはかすかで、読み取れない。
 否。
 かすかではなく、フェードアウトしていく最中だったのだ。
 結局、その文字列については分からなかったが、ジャスティスの心は決まっていた。
「判決を言い渡します!」
 両腕を伸ばし、右手を上に左手を下にする。太極マークが回転する。
「被告人は身勝手な行動で、多くの人たちに経済的損失を与えました。情状酌量の余地はありません。よって、有罪!」
 さらに続けた。
「次に原告の告訴について。原告は本件によって経済的損失を被った訳ではなく、またなんらかの刑事事案に巻き込まれた訳でもありません。純粋に、相手を貶(おとし)めて己が喜びを満たすためだけの行動と見なします! よって、虚偽告訴罪が成立します!」
 太極マークが八咫鏡から飛び出し、ジャスティスの手に収まり、白の勾玉が上になって巨大化する。白を右手で、紫を左手で掴み、上下に引く。すると勾玉の間には、銀色のポール。そのポールが一メートルほどの長さになったところで、白の勾玉の「尾」の部分をポールに接続し、それを掴んで空目がけて振り上げる。紫の勾玉が、まるで鎚(つち)の打撃部分のようになる。
 そして、大きく振り回して叫んだ。
「You are Guilty! ○リキュア・グレートガベル!」
 まず、セイギズラーを打ちのめす。
『ゴメンナサ〜イ』
 と言いながら、セイギズラーは消滅した。
 そして返すハンマーでシルエットを殴る。
『キャアアアアア!!』
 シルエットがチリヂリになって消えた。
「これにて、閉廷!」
 ハンマーを地面について、ジャスティスは宣言した。
 あの女は姿を消していた。


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