数日後。 芸能界でトピックになっているニュースがある。 美郁は窓際の列だが、その隣の席にいる男子に、隣のクラスからやって来た女子が言った。 「ねえねえ、羽屋納 総子(はやの そうこ)の不倫ニュース、見た?」 「おう、見た見た。あの人って、誠実そうなイメージだったよなあ。相手は若手料理人だっけ?」 「うんうん。お相手もネット配信とかで有名だし。羽屋納総子も、DoTubeで、子育て日記とか、他にもいろいろチャレンジしてたよね、カンタン、クリスマスの飾り付け!とかさ。ま、所詮、芸能人なんて、こういうもんなんだねえ」 「実は、サラリーマンのアニキが、羽屋納総子のファンでさ。なんだか、落ち込んでんだよ。で、スマホ睨んで、なんか打ち込んでるんで、横から覗こうとしたら、隠されてさ。そういうのって、気になるじゃん。だから、悪戦苦闘してどうにか見たら、悪口書き込んでんだよ、羽屋納総子の」 「ふーん。裏切られて『かわいさ余って憎さ百倍』ってやつか」 その時、本鈴三分前の予鈴が鳴った。 女子が帰っていくのをなんとなく見ていると、その男子の前、右斜め前にいる希依が言った。 「ミークちゃんは、こいつみたいに下世話な話題に惑わされちゃダメよ」 「ンだよ、葉苅、いいじゃんよー」 話を聞いていた男子が、軽く文句を言う。 「ミークちゃんはね、将来、法曹界(ほうそうかい)に進むの。もっともっと難しい問題に取り組むことになるんだから、そういう芸能ネタに使うムダな脳細胞なんか、ないんだから」 苦笑ながらも、どこか柔らかい表情で言った希依に、男子がちょっと驚いた表情になった。 「スゲエ、四方さん、女子アナになるのかよ! うん、いいんじゃないかな、四方さんって、ボーイッシュでかわいいし!」 両目を見開いて男子が美郁を見る。それにちょっと驚いていると。 「そっちの『放送』じゃない!」 やはり困惑気味ながらも、柔らかい笑みで希依が言った。 そんなやりとりをする内、三時間目・数学担当の教師が早めにやって来た。 美郁は苦笑いを浮かべるだけだ。
夕刻、佐波木市の中央公園に、一人の不思議な雰囲気を漂わせる女性がいる。金色の髪は左目を隠すようなワンレングスのボブヘア、着ている服はこの国には似つかわしくないエキゾチックなモノ。 女性は上空も含め、周囲を見渡している。そして。 「ふうん。この街に○リキュアが現れたのね? ……なかなか面白いじゃない。まあ、この街に限らないけど」 ニヤリとして言う。 「『正義の味方』が多いわ」 女性は左手を顔の横に挙げて言った。
「我こそ正義! 我こそ真実! 悪を裁け! 罪を裁け! 悪は断じて許さず! 来なさい、セイギズラー!」
女性の手から、文字の繋がったような光の帯が現れ、公園内にいてスマホを見ている人の内、まるで何人かを選んでいるかのように取りまいた! 光の帯に取り巻かれた男女は、放心したようになってへたり込む。そしてへたり込んだ人たちから白い影のようなモノが引っ張り出され、空中で全高五メートルほどの怪物になって中央の噴水の傍に着地した。 怪物は四本の腕に四本の脚、頭部には目を思わせる四つの光点と二つの口、さらに頭部のてっぺんにはスマホを思わせる長方形のものがあり、そこには意味不明の記号のような文字のようなモノが表示されていた。 『セイギズラァァァァ!』 怪物が吠える。 女性がそれを見て笑いを浮かべて言った。 「さあ、○リキュア。あなたが学生ということだから、あなたのスケジュールに合わせてあげたわ。早く来なさい」 『セイギズラァァァァ!』 再び怪物が咆哮し、放心していない人々が悲鳴とともに逃げ始めた。
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