コーヒーを備え付けのカップに注ぐと、生徒会長・浦田 理鉈(うらた りた)は聞いてきた。 「ミークちゃんはミルクも砂糖も入れる派かな?」 「インスタントコーヒーは両方入れますけど、ミルしたコーヒーは砂糖だけで」 それを聞き、理鉈はスティックシュガーをスプーンと一緒にソーサーに乗せ、美郁(みいく)の前に置く。 「一本でよかった?」 「はい」 理鉈は自分のコーヒーを持って、椅子に座る。 「理鉈先輩はブラックなんですね」 「うん。……フフン、大人でしょ?」 謎の笑みを浮かべ、理鉈はコーヒーをすする。美郁は砂糖を入れてかき回しはするものの、コーヒーを口に持っていくでもなく、カップの取っ手を弄んでいた。 そんな仕草に、理鉈が注視していることに気づいた美郁は、ふう、と息を吐いて言った。 「理鉈先輩、あの『なんちゃって手帳』なんですけど」 「うん?」 と、理鉈は笑顔で首を傾げる。この笑顔は、「すべて知っている」という返答に見えた。学校からあの商店街まで、直線距離で百四、五十メートル程度、あの騒ぎが耳に届いていたとしてもおかしくない。 頷いて美郁は聞いた。 「理鉈先輩は、あの手帳や怪物が何なのか、全部知ってるんですよね?」 その言葉を聞き、理鉈はちょっと困ったような笑みを浮かべ、コーヒーをすする。 カップをテーブルに置き、理鉈がカップに視線を落としてしばし沈黙の時。実際には一分もなかったと思うが、美郁には、かなり長い時間に思えた。 やがて理鉈が顔を上げる。 「順番通りに話すね。わかんないところがあっても、とりあえず一区切りがつくまでは待ってね?」 美郁が頷くと、理鉈は話し始めた。
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