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作品名:○リキュア Psy! Bang! Shock! 第一話 作者:ジン 竜珠

第3回   第一話 アストライアの帰還@−2
 四月。
 一年生は二年生に、二年生は三年生に進級した。
 編入してきた美郁は、ラッキーなことに希依と同じ二年A組になり、しかも席も窓際の列、その隣の列と、近くになった。
 始業式、そしてホームルーム、清掃が終わった時だった。
 校内放送で呼び出しがかかったのだ。
『二年A組、四方美郁さん、生徒会本部まで来て下さい。二年A組、四方美郁さん、生徒会本部まで来て下さい』
「なんだろう、生徒会まで来いって?」と、美郁はスピーカーを見た。そして希依を見た。
「希依ちゃん、ボク、生徒会本部がどこにあるか分からないから、教えてくれる?」
「うん、いいわよ」
 笑顔で応え、希依は鞄とトートバッグを手に取る。
「ありがとう」
 美郁も笑顔で鞄をバッグを手に取った。

 佐波木市立佐波木第一中学校は、二つの校舎で構成されている。第一校舎は生徒の教室や保健室などがある三階建て。一階と二階にある渡り廊下で繋がっている第二校舎は二階建てで、職員室や各種実習室、図書室や放送室などがある。生徒会本部は、第二校舎の二階にあった。
 ノックをすると、十二畳ほどありそうな広い部屋に、髪のえり足を水色のリボンで一つ結びにした、一人の女子生徒がいた。
 オレンジ色のジャケットに薄い青色のブラウス、黄色いネクタイ。そしてチョコレート色のプリーツスカート。襟章は「VB」をデザインしたものになっている。
 つまり三年B組の女子ということだ。
 美郁は部屋の中を見る。長机や椅子、本棚やプリンター、スキャナーなどを置いた棚。生徒はその女生徒しかいない。どうやら、この女生徒が生徒会長なのか?
 美郁は希依を見る。希依が頷いて「生徒会長の浦田(うらた)さん」と言ったので、美郁も頷いて、部屋の中にいる女生徒に言った。
「あの。ボクが四方美郁ですけど?」
 椅子に座っていた生徒会長が、笑顔になった。どこか眠そうな表情だが、こういう顔なのだろう。
「ああ、君が転入生のミークちゃん? へえ、ボクッ娘なんだぁ。あ、私は浦田理鉈(うらた りた)。リタちゃん、でいいよン」
 話すスピードは普通だが、どこかのんびりした印象がある。そして理鉈は立ち上がると「部屋、変えようか」と、美郁を別の部屋に案内した。
 行った先は、二階の一番西側の部屋。教室の広さはさっきの部屋の半分ほど。元は何かの物置だったような印象の部屋だ。中にあるのは、正方形の机に椅子、部屋の隅に長机があり、そこにはコーヒーミルやサイフォン、電磁調理器などがある。長机の隣には化粧台のような机があった。
「ああ、悪いけど君は外で待っててくれる?」
 そう言って、理鉈は希依を閉め出した。
「えとね」と、理鉈は化粧台の引き出しを開けて、中から何かを出した。
「なんですか、それ?」
「我が校編入の記念品」
 笑顔でそう言って、理鉈は「それ」を手渡してきた。一見、手帳とその背表紙部分に挿し込んだペン。
「手帳、ですか?」
 美郁は開こうとしたが、開かない。
「開きませんけど?」
「ン〜。ま、今はまだ、ね」
「は?」
 何か、よく分からない言葉に思わず頓狂な声を上げると、理鉈が、やはり笑顔で手をヒラヒラとさせて言った。
「なんでもないなんでもない。『そういうもん』だと思っててよ。なんちゃって手帳、とかさ」
「わけわかりません」
 美郁は、呟いた。


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