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作品名:○リキュア Psy! Bang! Shock! 第一話 作者:ジン 竜珠

第2回   第一話 アストライアの帰還@−1
 佐波木(さばき)市にある地方裁判所佐波木支部から出てきた二人の少女。一人はショートヘア、一人はロングヘアの長身。ショートヘアの少女はボーイッシュな美少女で、今一人は誰もが振り返るような美少女だった。
 ボーイッシュな少女が、憤まんやる方ない、といった様に言った。
「あの判決、絶対おかしいよ。ボクなら絶対に危険運転致死傷罪を適用するな」
 それを聞いたロングヘアの少女が苦笑を浮かべて言った。
「ミークちゃんは、ちょっと厳しいかな? 検察官も認めてたでしょ、事故の前に電柱にぶつかって、パニックになってた、っていうのは。複数の対向車のドライブレコーダーの映像っていう、客観的証拠だってあるんだし」
「ケイちゃんこそ、甘すぎるよ。いくらパニクってたからって、一般道を時速八十キロ以上で走って、信号無視なんて、過失致傷の域を超えてるって! ていうか、この日本っていう国自体が、加害者に甘すぎるんだ!」
 ロングヘアの少女は「あはは」と、やはり苦笑いで応えるのみだ。
 ミークと呼ばれた少女……四方 美郁(しほう みいく)は、思い出したように言った。
「そうだ。実は父さんが独立して、弁護士事務所を構えることになったんだ。場所は佐波木市の中央区!」
「え? そうなの?」
 と、ロングヘアの少女……葉苅 希依(はかり けい)が、驚いたように応える。
「うん。家も事務所の近くなんだ。……まあ、近くって言っても、十分ぐらい歩くけど。中央区っていったら、確か佐波木第一中学校の校区だよね?」
 希依がうれしそうに頷く。
「うん! そうか、じゃあ、ミークちゃんも四月から同じ中学校だね。そういえば、ミークちゃんのお母様って、検事だったわよね?」
「うん。打妙(うったえ)町だから、裁判の時には、ここに来るんだ」
「じゃあ、問題ないわね。打妙町と佐波木市中央区って、この裁判所を挟んで、百八十度、東と西になるし」
「うん、よろしくね!」
 弾けるような笑顔を浮かべた美郁に、希依も笑顔で頷いた。

 裁判所の遙か上空に、一人の青年が浮かんでいる。髪こそザンバラだが、その容貌は美形と言ってもいい。
 青年の着ている服は、この国のものとはデザインが異なる、どこか異国情緒を感じさせるものだった。
 青年は空中に目をやり、あちこちを眺めている。そして不敵な笑顔を浮かべて言った。
「ほう? なかなか面白い世界じゃないか。己だけが頭がいい、己のみが正しい、そんなマナスに満ちている。先遣としてやってきたが。どれ、少しばかり試してみるか」
 そう言って青年は何かを探すように、頭(こうべ)を巡らせる。そして。
「そうだな、様子見としては、あのぐらいが適当だろう」
 口元に薄い笑みを浮かべ、右手を軽く挙げた。

 美郁が、突然立ち止まり、険しい表情で周囲を見回す。
「どうしたの、ミークちゃん?」
「う……ん。今、なんか、ものすごくイヤな感じがしなかった?」
「え? 何、それ?」
「なんていうか、うまく言葉にならないけど、とにかくイヤな感じ……」
 希依は辺りを見るが、わからない。
「もしかして、風邪引いた?」
「違うと思う。そういうんじゃないんだ」
 そう言って、美郁が笑顔を作った。
「ゴメンね、変なこと言っちゃって」
「……うん」
 そして、二人は何ということはない、雑談をしながら、駅へと向かった。


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