猛烈な速さでお城に到着したデレラは、衛兵たちをちぎっては投げちぎっては投げ。 そして大広間へ向かうと、そこには正八面体のシルエットを持った鎧に、身を包んだ衛兵。衛兵が目にも留まらぬ速さで鎗を投げてきました。とてもではありませんが、避けられそうにありません。あわやデレラに命中か!?と思った瞬間、誰かが目の前に現れ、デレラをかばいました。 その誰かは、一番上の姉。姉が振り返って言いました。 「デレラは死なないわ。だって、わたしが護るもの」 再び鎗が飛んできます。デレラは、先刻飛んできた鎗を拾って、投げ返します。二つの鎗は空中で交叉します。そしてデレラの投げた鎗が衛兵を貫きました! 衛兵の鎗に倒れた姉を抱き起こすと、姉は言いました。 「ごめんなさい、こんな時、どういう顔をしていいのか、わからないの」 デレラは答えます。 「笑えばいいと思うわ」 その言葉にかすかに微笑む姉を残し、デレラは大広間の扉、通称「ヘブンズ・ドア」を開けます。そこでは王子が笑顔を浮かべて待っていました。 王子に向かおうとした時、二人の間で腰を抜かしているメイドたちが目に留まりました。メイドたちはデレラを見て震えています。
彼女たちは、私と同じ、弱い立場の人たち。敵ではないわ。
そう思い、素通りしようとした時。 デレラがかぶったカボチャの中で、何かが回転する音がしました。次の瞬間、勝手に体が動き始めました! 「何をしたの、義母さん!?」 自分の意志とは無関係に、体が動き、メイドたちの体をちぎっては投げ、ちぎっては投げ……。
今のショックに、かわいた心で王子の所までたどり着くと、王子は笑顔のまま、両腕を広げ、デレラに言いました。 「待っていたよ、デレラ。人の肉体は、神が与え給うた、滅ぶべき鎧。この鎧は心を護るモノ。でも、この鎧があるために人は本当には、わかり合えない。結果、人は見せかけの希望にすがり、哀しみを紡いでいく」 「王子! 王子が何を言っているのか、わからないわ!」 「人はアダムから生まれ、アダムに還る。さあ、僕を殺してくれ。僕にとって、生と死は等価値なんだ。アダムに還るだけなんだよ。肉体という鎧がないからこそ、すべてと一つになり、理解し合える。人はみんな、アダムの、ろっ骨なんだ」 「……………………」 「さあ、僕を殺してくれ。さもないと、君たちが滅ぶことになる。未来と自由を手に出来るのは、王家か庶民か、どちらか一つだけなんだ」
そうして、長い長い、まるで、というかこれ絶対、放送事故だろ!?と思えるほどの長い静止時間の後、デレラは王子の首を捻じ切りました。
憔悴したデレラが、ガタガタになったカボチャを脱いで手に持ち、ドアを開けて外へ出ると、一番上の姉が待っていました。 デレラは安堵の思いで言いました。 「有り難う、さっきは護ってくれて」 「そう? わたし、あなたを護ったの?」 「覚えてないの?」 姉は首を横に振ります。 「覚えてないんじゃなくて、知らないの。多分、わたしは」
「776人目だと思うから」 「えッ!?」 「あと1人でフィーバーだって言ってたわ」 「いや、それ、誰が言ってるの!? ていうか、なに、それ!?」 「最近は目押しが出来ないってボヤいてた」 「だから、誰が!?」
おしまいっ!!
(ストーリー・オブ・ザ・シン・デレラ・了)
あとがき
そういやあ、「シン・劇場版」、「Q」までしか見てねーわ。 続き、どうなったんだろう?
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