そうこうするうちに、パソコンが届いた。 「あ、開封とか、セットアップは、全部こっちでやるんで」 そう言って、女性は業者を帰す。 「じゃあ、兄さん、箱から出してくれる?」 「え? いいけど、これ、ここにセットするの?」 「ええ。じゃないと、仕事にならないでしょ? ……ああ、代金なら問題ないわ、組合持ちだから。……ラッキーだったわ」 「え? なんか言った?」 「べ、別に!?」 なんか、ラッキー、って聞こえた気がしたけど、気のせいかな?
パソコンのセットアップも終わり、女性は仕事を再開した。 すごい、ものすごい速さで仕事こなしてる。特にグラフを作るための表入力なんて、自動入力か?っていうぐらいだ。 「あ、もうお昼か。ねえ、そろそろお昼だけど」 「もう、そんな時間なの?」 俺は台所の棚まで行った。 「えーっと。うどんと、ラーメンと、焼きそばと。何種類かあるけど、どれがいい?」 俺は、棚から適当にカップ麺とか出して聞いた。 「……兄さん、まさか、それが昼食、とか?」 「え? そうだけど?」 「まさか、自炊、してない、とか?」 「……だね。外食しなかったら、カップ麺かな?」 こめかみに青筋が立ち、女性が腕を組み、俺の前に仁王立ちになった。 「兄さん! 人間は、食べたもので体が作られるのは、わかるわよね!?」 「え? えー……。そう、だね、そうなる、ね?」 「つまり! 兄さんを熱いお風呂にたたき込んで、突き回したら、カップラーメンが出来上がるの! 兄さんは、小学校の卒業文集に、書いたのかしら、『僕の将来の夢は、カップラーメンになることです』って!?」 「書かんわ!! どんな小学生だ、それ!?」 「待ってて!!」 そう言い置いて、女性は部屋を出た。 三十分後。 スーパーのレジ袋を両手に提げて、女性が帰ってきた。 そして。 「台所、使うけど、どうせ、包丁もないんでしょ!?」 「うん」 「だから、買ってきたわ!」 そして袋からまな板とか、包丁とか食材とか出して、調理を始めた。
ちゃぶ台の上には、二人前のチャーハン。すごい! チャーハンなんて、出前とか外食以外なら、コンビニのヤツしか食べたことないぞ。 そして、うまかった! 久しぶりに家庭料理ってものを食べた気がする。 ふと、故郷(くに)のことを思い出した。今度の連休に帰ってみるかな。大学出て、一度は都会の企業に就職したけど、内部の派閥争いとかいろいろとあって、地方の支社の勤務になって。これなら、故郷で就職したのとあんまり、かわらなかったな。
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