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作品名:わが支社でも始めることにしました。 作者:ジン 竜珠

第3回  
 そうこうするうちに、パソコンが届いた。
「あ、開封とか、セットアップは、全部こっちでやるんで」
 そう言って、女性は業者を帰す。
「じゃあ、兄さん、箱から出してくれる?」
「え? いいけど、これ、ここにセットするの?」
「ええ。じゃないと、仕事にならないでしょ? ……ああ、代金なら問題ないわ、組合持ちだから。……ラッキーだったわ」
「え? なんか言った?」
「べ、別に!?」
 なんか、ラッキー、って聞こえた気がしたけど、気のせいかな?

 パソコンのセットアップも終わり、女性は仕事を再開した。
 すごい、ものすごい速さで仕事こなしてる。特にグラフを作るための表入力なんて、自動入力か?っていうぐらいだ。
「あ、もうお昼か。ねえ、そろそろお昼だけど」
「もう、そんな時間なの?」
 俺は台所の棚まで行った。
「えーっと。うどんと、ラーメンと、焼きそばと。何種類かあるけど、どれがいい?」
 俺は、棚から適当にカップ麺とか出して聞いた。
「……兄さん、まさか、それが昼食、とか?」
「え? そうだけど?」
「まさか、自炊、してない、とか?」
「……だね。外食しなかったら、カップ麺かな?」
 こめかみに青筋が立ち、女性が腕を組み、俺の前に仁王立ちになった。
「兄さん! 人間は、食べたもので体が作られるのは、わかるわよね!?」
「え? えー……。そう、だね、そうなる、ね?」
「つまり! 兄さんを熱いお風呂にたたき込んで、突き回したら、カップラーメンが出来上がるの! 兄さんは、小学校の卒業文集に、書いたのかしら、『僕の将来の夢は、カップラーメンになることです』って!?」
「書かんわ!! どんな小学生だ、それ!?」
「待ってて!!」
 そう言い置いて、女性は部屋を出た。
 三十分後。
 スーパーのレジ袋を両手に提げて、女性が帰ってきた。
 そして。
「台所、使うけど、どうせ、包丁もないんでしょ!?」
「うん」
「だから、買ってきたわ!」
 そして袋からまな板とか、包丁とか食材とか出して、調理を始めた。

 ちゃぶ台の上には、二人前のチャーハン。すごい! チャーハンなんて、出前とか外食以外なら、コンビニのヤツしか食べたことないぞ。
 そして、うまかった!
 久しぶりに家庭料理ってものを食べた気がする。
 ふと、故郷(くに)のことを思い出した。今度の連休に帰ってみるかな。大学出て、一度は都会の企業に就職したけど、内部の派閥争いとかいろいろとあって、地方の支社の勤務になって。これなら、故郷で就職したのとあんまり、かわらなかったな。


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