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作品名:ストーリー・オブ・ザ・鶴の恩返し 作者:ジン 竜珠

第1回  
 ある雪の降る夕暮れのことでした。一人の若者が鉄鍋を提げて、帰り道を急いでいたのです。
 その時ふと、若者がこちらを見ました。
 千載一遇の好機とばかり、鶴は必死になって鳴きました。
『ケケキョーイ、ケケキョーイ!』
「……そんだけ元気なら、大丈夫だなや」
 そして若者がまた前を向いて歩き始めます。
『ケケッ、ケケッ!』
 若者がこちらを見ました。
『……ケ、ケェェェェン……。ケェェェェン……』
「虫の息か。助けるだけ、無駄だなや」
『ケケケケケケケケッ!』
 鶴は自分の足をくちばしで指します。若者は近づいて、そこを見ました。
「ああ、罠に掛かってるのかあ。悪いなあ、それ、オイラが仕掛けた罠じゃねえからよう、他の誰かが仕掛けた罠に、かかってる獲物逃がすのは、仁義に反するで、じゃあな」
『いいから、外せってーの!!』
「ん? 今、なんか言ったか、人間の言葉で?」
 若者が、怪しい物を見るように、鶴をねめ回します。
『ケ、ケケ、ケケケケッ?』
「……気のせいか。とにかく、オイラは買って帰ったこいつを晩飯にするんだからよ、あんまりここで時間潰したくないんだわ。どれ」
 根がお人好しなのでしょう、若者は鶴の罠を外してくれました。
 去って行く若者の背を見送り、鶴は呟きました。
『誇り高き、鶴の精霊である私を助けてくれたお前に、今宵、恩返しにゆこうぞ』
 鶴の姿は、若い娘のものになっていました。

 若者が町で買って帰ったものを調理しようとした時。
『もし』
 と、家の外から若い女の声がします。
『もし』
 聞き間違いかと思いましたが、また、声がします。時は宵の口。若者は心張(しんば)り棒(ぼう)を外し、戸を開けます。そこにいたのは、若く美しい娘。
「すみません、旅の者ですが、道中、道に迷ってしまい、そうこうするうちに夜になってしまいました。一晩でよろしいので、泊めてはいただけないでしょうか?」
 根がお人好しの若者は、快く娘を泊めてやることにしました。


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