ルエリアは陸に上がり、王家のお城へ向かいました。その途中で、王子が何者かに頭をばっくり割られ、瀕死の重傷で、明日をも知れぬ命だというのを、城下町の人たちの話で知りました。
“あー、じゃあ、美中年にしとくか”
あっさり方針転換し、お城に来たルエリアでしたが、門衛が中に入れては、くれません。 至極、当たり前のことでした。 どうしたものかと思っていたら、なんと、あの美中年が馬に乗って、お城に帰ってくるところに出くわしたのです。 おお、海の神の配剤に感謝いたします! そんなことを思い、馬に近づくと。 「ム? おお、キサマは、あの時の!! 衛兵たちよ、こやつが王子を害した大罪人であるぞ!」 どうやら、王子を陸に連れて行った時に顔をバッチリ見られ、さらに王子の頭を割った張本人だと思われているようです。
まったくもってその通りでした。
やむなくルエリアはその場から撤退することにしました。 ですが、地理にうとく、おまけにこの「脚」というものに慣れていないため、逃走も並大抵の苦労ではありません。なのでルエリアは家の壁に指を食い込ませ、塀などにつかまって、腕を使っての逃走に切り替えました。 ようやくにして衛兵を撒(ま)いた時には、山の方まで来ていました。 これはおとなしく海に帰って、魔女っ子に脚、返した方がいいか、と思い、ルエリアは、人目を気にしながら街へ行くと。 「私ではありません!」 「黙れ! 修道女などに化けおって、この大罪人が!」 一人の修道女が縄で、ぐんぐる巻きにされ、引っ立てられているところでした。 遠目にも、修道女がルエリアに似ているのがわかります。 “あー、あん時、道を歩いてた修道女かあ。ご愁傷様” この騒ぎに紛れ、ルエリアは海に帰りました。
海に帰ったルエリアは、脚を返し、声を返してもらって、今度は「羽根ちょうだい」と言いました。 魔女っ子は頭を抱えて言いました。 「聞くぞ? その翼、何のためだ?」 ルエリアの説明に、魔女っ子は卒倒しそうになるのをこらえて言いました。 「お前は本当にロクなことしねーなー! ……でも、その修道女だけでも助けないと、寝覚めが悪いか」 そしてルエリアに翼をつけてやりました。
かくしてルエリアは修道女を助けたのですが、そのシルエットが人々にはその国の伝説の聖獣クリオーネに見えたらしく、一部の人には「天の加護だ!」みたいになっちゃったらしく、たまたまそこの王家が圧政を布(し)いていて、「打倒・王家」の動きが王国全土で起こっちゃったりなんかして、なんだかんだで無血革命が実現しました。 その時の旗印がクリオーネ、そして誰が言い出したのか、後にその革命は「聖女ルエリアの奇跡」と呼ばれることになりました。
ほんとに誰が言い出したんだ?
(ストーリー・オブ・ザ・人魚姫 了)
あとがき
なんだ、これ?
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