「あーあー、いい天気なのに、つまんないわねえ、なんか刺激的なことないかしら、こう、全身が総毛立って、鱗(うろこ)がビキビキー!って残らずめくれ上がるようなヤツ!」 ぶつくさ呟きながら、ルエリアが海面から顔を出して泳いでいると、沖の方から一隻の船がやってくるのが見えました。 「人間の船だわ。なんか面白いものあるかしら?」 興味津々でルエリアは船に近づきました。すると、一人の若者が船の左舷近くに立って、進行方向を見ていました。 「おおっと美少年み〜っけ」 胸がはやるのを覚え、ルエリアは急速潜行します。そして海底で適当な石を探しました。 「いいのがあったわ」 ワカメがくっついたその石は、ルエリアの頭ぐらいあります。それを持って、急速上昇しました。一度船の左舷に浮上し、若者の位置を確認、再び潜って今度は、右舷側の、船からかなり離れた位置に移動します。 浮上したルエリアは、 「このあたりだったわね」 と当(あた)りをつけました。 そして。 「ひぃかぁ○ぃにぃなぁれェェェェェェェェ!!」 叫びとともに石をブン投げると、放物線を描いた石が見事に若者に命中し、若者が海に転落しました。 「よっしゃあ!」 ガッツポーズを作った後、ルエリアは急速潜行し、若者を海中で拾います。このまま陸(おか)まで行き、船から落下して気絶して漂っていたところを自分が助けた、という展開(シナリオ)をデッチ上げるのです。
陸地の岩場地帯まで行くと、若者の背を岩にもたせかけます。 さて、ここは自然に目覚めるのを待とう、でも、なんか頭から血がビュービュー吹き出してて白目むいてるけど、大丈夫かなと思っていたら、岩の向こう側に、一人の中年男性がいるのがわかりました。なにやら格式張ったスーツを着ています。 「え? 王子? なぜこんなところに!?」 中年男性が驚いたような声を上げました。 「おっと、美中年やんけ、あっちもいーなー」 逆ナンするの、どっちにしようか悩んでいると、中年男性が足場の悪いのも気にせず、こっちに向かってきます。さらに、遠目ですが、修道女が砂浜の向こうの道を歩いているのが見えました。 めんどくさいことになりそうだったので、ルエリアは若者を置いて、撤収しました。
|
|