その日も、人魚姫ことルエリアは、歌を歌いながら海の中を舞うように泳いでいました。 「○〜ニョ○〜ニョ○ニョ、コハダの子」 その時、深海から猛スピードで迫り来る者がありました。そして。 「魔女っ子パァァァァァァァァァンチッ!!」 「グハァッ!?」 腹に強烈な一撃をくらい、ルエリアは、しばしニューネッシーの如き格好で海の中を漂いました。 「ふうっ、ふうっ……。何すんのよ、深海の魔女っ子!!」 ルエリアはパンチを放(はな)ってきたチビっ子魔女に、苦情をぶつけます。 「やかましいわ! お前はジ○リと全国のジ○リファンを敵に回す度胸、あんのか!?」 「い、いーじゃんよ、あたしだって、人気にあやかりたいモン。ていうか、なんであたしの歌声が、深海まで届いたのよう!?」 「水中は音が届きやすいんだ。だから、注意のこと!」 「なるほど! だから、ガッチン漁が有効なのか。ねえ、あんたのとこに向かって、ガッチン漁やってもいい? もちろん、あたし自身に影響ないようにして?」 「魔女っ子アルゼンチンブリーカァァァァァァ!!」 「げべべべべべべべ!!」 チビっ子魔女に仰向けに担ぎ上げられ、そっくり返ったルエリアの背骨が、ギチギチと悲鳴を上げました。 「とにかく! もう唄うんでねーど!!」 「押忍(オス)!」 ルエリアの返事に頷き、魔女っ子は深海に帰っていきました。
ルエリアは浮上し、海面近くで舞うように泳ぎながら唄いました。 「となっりの、芝生は、あおっくみえるっさ、りくっのうえなんて、ひど……」 その時、深海から猛スピードで、殺気を孕みつつ迫り来るものがありました。そして。 「魔女っ子サマーソルトッ!!」 「ゴパァッ!?」 華麗な海中バク転蹴りが極(き)まり、ルエリアは海から10メートル近く吹っ飛ばされました。くるくるくる〜と宙で回転する様は、繰り手のない人形(マリオネット)または骸(むくろ)でしょうか。 引力にひかれ、ルエリアは落下します。そしてタパァン!と腹から豪快に着水し、しばしうつ伏せで海面を漂いました。 勢いよく顔を上げ、ルエリアは吠えます。 「なにすんねんな、このアバズレがぁ!!」 「やかましいわ!! う・た・う・な、っつーたやろが、それなのにデズ兄(ニイ)とか、もっとヤバいヤツ唄いやがって!」 「……ごめん」 あっさりとルエリアは謝りました。 謝罪を聞き、魔女っ子は深海に帰っていきました。
|
|