シツボーグのメスを剣で弾き、回り込んで、ナイトは斬りかかる。その一撃を受け、シツボーグがよろけた。だが、シツボーグも体勢を整え、今度は注射器を向ける。ナイトは、距離をとれば大丈夫と思ったか、バックステップで間合いをとる。だが、シツボーグは「それ」で刺すのではなく、その先端から、液体を発射した! まさか、そういう攻撃とは予測していなかったのか、ナイトがまともに液体を浴びる。すると、ナイトが片膝をつき、言った。 「……うぐ、……眠い……」 「! 麻酔薬なんだわ!」 『シツボォォォォォォォォォグ!』 シツボーグがメスで斬りかかる。かろうじて、それを剣で受け、はじき返すが、ナイトはフラフラだ。 すると、シツボーグの兜(かぶと)の上から、白い五角形のものが降りてきて、口元に来た。一瞬、マスクかと思ったが、それが展開する。どうやら、薬包のようだ。 『シツボォォォォォォォォォグ!』 開いた薬包から、白い粉が吐き出され、辺りに充満する。さながら白い煙幕だ。 「いけない、シツボーグが見えない!」 エミィが思った時、悲鳴とともに金属音がして、ナイトが倒れるのが見えた。煙幕をなんとかしないと! そう思って魔法を発動させる。 「風よ風よ、霧を晴らして!」 エミィが出した杖から光があふれ、風が吹く。そして、白い煙幕を吹き飛ばした。すると、まさに、ナイトの背後からシツボーグが斬りかかるところだった! 「ナイト、後ろ!」 その声に、振り返ってナイトがメスを剣で受ける。だが、麻酔が効いていて、その攻撃を支えるのも、限界だ。 「ぐうううう……!」 苦鳴とともに、ナイトが片膝をつき、両手で持った剣が下がっていく。 「麻酔の効果を打ち消さないと!」 覚醒系の魔法を使おうとした時、なぜか、閃いたキーワードがあった。特に考えず、エミィは魔法を発動させる。 「辛いの辛いの、こっちにおいで! ハバネロソース、ゴー!」 真っ赤な光が杖から発射され、ナイトを包む。次の瞬間。 「んばぁあぁぁーーーーーーーーー!! 頭の毛穴から火が出るぅぅぅぅぅ!!」 叫んで、ナイトが立ち上がり、剣でシツボーグを殴り飛ばす。その衝撃でシツボーグの右肘から先のメスが外れた。 「くあっはあぁあああぁああぁぁああぁぁ!! 辛い辛い辛い!」 叫んで、ナイトが辺りを駆け回る。少しして。 立ち止まり、ゼェゼェと肩で息をして、ナイトが涙目で言った。 「死ぬかと思った。シツボーグの攻撃よりも、キツいよ〜」 「……………………ごめん。それより、今のうちに!」 「うん!」 ナイトが髪飾りのホープ・ジュエルを外し、ホープ・ジュエル越しにシツボーグを見る。 「希望の星はどこ!?」 ちょっとして。 「あった! 胸の中心!」 ナイトがスクエアミラーを構える。 「光の章! 輝く刃!」 ナイトが光の刃を持ったページを、スクエアミラーに挿し込んだ。 「○リキュア、ドリーム・スラァァァァッシュ!」 光に包まれたナイトが駆け抜け、シツボーグの胴を横薙ぎに斬る。駆け抜けていった時、ナイトの左手には、希望の星が輝いていた。 そして、シツボーグが消滅した。 剣を構え、ナイトが言った。 「夢と希望を忘れないで! ドント・フォゲット・ヨア・ドリィィィィィィィム!」
その時、一人の若い男がエミィの前に現れた。 直感でわかる。警戒とともに、エミィが言った。 「あなた、カーナ・シー・エンパイアの人ね?」 男がうなずく。 「俺の名前は、コードック。サービ・シー・ランドの王子だった者だ」 「……え? サービ・シー・ランドの?」 ちょっとした衝撃が胸をつく。コードックと名乗った男は続けた。 「お前、ファン・タ・シー・キングダムの者だな? 今日のところは、宣戦布告だ」 そして、姿を消した。 「サービ・シー・ランドは、確か、五年前に滅びたって……。生き残りの人たちは、世界中に散らばったっていうけど、まさか、王子がカーナ・シー・エンパイアに身を寄せてたなんて……」 沈痛とも驚きともつかぬ複雑な思いが、エミィの胸の中で渦巻いていた。
ナイトの手にあった希望の星が、ウッキューの持つクリスタル球に吸い込まれる。すると、それがウッキューの手を離れ、ある民家の擁壁(ようへき)にもたれるようにして、へたり込んでいた青年の頭上へ行った。 そして球から光が涙滴に滴って涙滴の中に光が満ちる。そして涙滴がグルリン!と百八十度向きを変えた。その形状は、まさにエクスクラメーションマーク(!……びっくりマークである)。そのエクスクラメーションマークが光を放った瞬間、青年が目を見開き、そして立ち上がった。 「そうか、もしかしたら、エファプス……神経クロストークなのかも!? 葉太くんは、肩に大けがをした。その回復時に、隣り合った神経軸索が混線したのかも知れない! とすると、実際に痛みを伝えているのは違う場所! そういえば、葉太くんは、心臓が弱いって、問診票にあった。こうしちゃいられない! 早く心電図検査を! ……こんな基本的なことに気づけなかったなんて、なんて愚かなんだ、僕ってヤツは!」 そして、青年は駆けて行った。 変身を解いた夢華が、エミィのところに来た。 「ねえ、エミィ。さっき、エミィの前に現れた男、何者?」 「カーナ・シー・エンパイアの幹部だと思う」 「そうか。この前の、アイ・スクリームっていうヤツの仲間か」 「うん」 夢華が、闇が消えて元通りになった街並みを見て、言った。 「私、頑張るよ! みんなの夢と希望を奪って世界を闇に変える、カーナ・シー・エンパイアの野望から、みんなを護る!」 その瞳には、強い決意がまばゆい光を放っている。それにたのもしいものを感じ、また、自分の中にも決意の光が生まれるのを感じて、エミィはうなずいた。 「私も、頑張る。夢華、二人で力を合わせて、夢と希望を護ろ!?」 夢華が笑顔になってうなずいた。 「うん! そのためにも、プリンセスと、残りのホープ・ジュエルをサガそう、オー!」 とても素敵な笑顔だった。
(○リキュア、第2話ぐらい?・了)
本当に申し訳ないけど、実は。
・矢風医師……二又一成氏
それから
・村越承平……千葉一伸氏
を、イメージさせていただいてました。 いや、本当にごめんなさい!
「3」の薬剤名、本来は「トラムセット」ですが。
トラムゼットン。
強そうでしょ(笑)?
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