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作品名:○リキュア、第2話ぐらい? 作者:ジン 竜珠

第3回  
 翌日、金曜日。
 放課後、保健室に、相良愛望はいた。彼女は保健委員であり、六時間目終了直前に体調を崩した生徒に付き添って、保健室に来ていたのだ。
「大丈夫、ようちゃん?」
 ようちゃんと呼ばれた男子……竹野葉太(たけの ようた)がうなずいた。
「うん。なんとか、落ち着いたよ。ゴメンね、めぐちゃん」
「気にしないで。それより、ようちゃんは心臓が弱いんだから、無理しないでね?」
 愛望は笑顔で応える。愛望と葉太は従兄弟同士だ。愛望の父と葉太の母が兄妹になる。小さい頃は、愛望の母は三つ隣の市にある大学病院に勤務していた。しかし、小学校四年生の時、母はこの街の病院から招聘(しょうへい)されて勤務することになって、引っ越してきた。葉太はこの街に住んでいたが、小学校の学区が違っていたので、中学に上がって、始めて、同じ学校に通うことになったのだ。
「……!」
 不意に、葉太が左の二の腕を押さえ、顔を歪める。
「まだ痛むの?」
「……うん」
 葉太は一ヶ月ほど前、左肩に、何針も縫う大けがをした。その傷はもう治ったが、治った頃から、ケガをした訳ではない二の腕が、時折、痛むようになったという。
 心配になって、愛望は聞いた。
「お医者様には、行ってるのよね?」
「うん」
「ちゃんと、お薬、飲んでる?」
「飲んでるよ。……これ、だけど」
 と、葉太は、ポケットに入れたピルケースを見せる。それを受け取り、愛望は中の薬剤を確認する。
「トラムゼットンかあ。強い薬、飲んでるわね」
 この薬剤には、トラマドール塩酸塩とアセトアミノフェン、二種類の有効成分が配合されており、効果が高い代わりに服用初期に眠気や、吐き気を覚えたりするケースが、ままある。また、長期間服用すると、薬剤耐性がついて効き目が弱くなったり、薬剤に対して依存症になったりすることもある。
「前の薬が、あまり効かなくてね」
 愛望が返したケースを葉太がポケットに入れた時、保健室の引き戸が開いた。
「あ、愛望先輩?」
 振り返ると、そこにいたのは。
「あれ、夢ちゃん? どうしたの、保健室に? どこか、ケガでもした?」
 一学年下で、同じ小学校出身の岸夢華だった。
「そうじゃなくて」
 と、夢華は手にした、A5サイズの紙を見せる。
「栽培部の部長さんが、ここにいるって聞いて」
「その紙、ギルドの?」
 そう言った愛望の言葉に答えたのは、葉太だ。
「うん。花壇と菜園の草むしりを依頼したんだ。僕が、こういう状態だし、部員、少ないし。お礼は、栽培部で育ててるハーブ。ハーブティーにいいよ?」
「草むしりのお手伝いは、私とエミィに、任せてください!」
 夢華が胸を右の拳で、「ドン!」と叩いた。


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