ナイトが行った先にいたのは、茜(あかね)という、小学二年の少女。彼女は、ナイトの小学校時代の友人の妹だ。その友人は、隣町の私立中学に進学したが、今も親交はある。そして。 地面に座り込んで、しょんぼりしている茜を見て、ナイトは思い出していた。
○ュアナイトこと夢華は、かつて一匹の犬を飼っていた。物心ついた頃から、家にいて、家族のように暮らしてきたのだ。雑種で、毛色は明るい茶色だったが、シッポだけが真っ白だった。だから。 「しろいしっぽだから、しろっぽ!!」 夢華は、そう名付けた。 夢華としろっぽは、いつも一緒だった。一人っ子ということもあったのか、夢華はしろっぽを本当に兄弟のように思っていたし、しろっぽも、なついてくれた。 しかし、小学六年の、冬のある朝。 「ねえ、どうして、しろっぽは起きないの!? どうして、動かないの!?」 父・実が言った。 「しろっぽは、天に召されたんだ」 母・和叶が言った。 「うちに来た時、もうしろっぽは、大人だったの。寿命だったのよ」 両親の言うことはわかるつもりだったが、認められなかった。 「しろっぽ、しろっぽー!」 とりすがり、揺さぶってみたが、しろっぽは目を覚まさなかった。 夢華は家を飛び出した。 「夢華、どこへ行くんだ?」 背中で聞いた父の声に、夢華は応えた。 「しろっぽの魂をサガしてくる! 魂は、風に乗ってるって、思い出の場所にいるって、そういう歌があったもん!」 そして、しろっぽとの思い出の場所を巡った。
辛いだけだった。
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