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作品名:ファンタシーサガ ○リキュア! 作者:ジン 竜珠

第95回  
 賢は改めて、一同を見渡す。
「マップのもう一つの力だけど」
 そして、マップの欠片を宙に投げ上げる。小さく呪文を唱えると、ウィッカの持っていた地図が宙を舞い、バラける。賢が小さく呪文を唱えると、それは組み合って、「道」を作り、空へと伸びていった。
「マップの欠片は、もともと白紙なの。それぞれの情報が、それぞれの地域で書き込まれて実体化する。それをファン・タ・シー・キングダムで保管していたの。だから、人間界のマップの欠片も、一度その情報をクリアしてやると、白紙に戻る。そこに新たな情報を書き込むと、新たなマップになり、『道しるべ』となる」
 巫が言った。
「数百年前の一件で、ファン・タ・シー・キングダムと、カーナ・シー・エンパイアがある大陸の間には、次元の壁が作られて、お互い、簡単に行き来出来ないようにされていたの。カーナ・シー・エンパイアの侵攻を食い止めるために。だけど、人間界を中継すれば、簡単に行き来、出来たのね。それに気づいたカーナ・シー・エンパイアの軍勢は、人間界経由で攻めてきた。その影響を受けて、多分、その頃、……人間界では八百年ぐらい前らしいけど、何らかの戦争みたいなものが起きていたと思うわ。それこそ、一国の政権や体制が変わるような、大乱が」
 そして聖が頭をかきながら、言った。
「実はさ、あたしたちがホープ・ジュエルに分割したせいで、人々の願いを叶える力がさらに弱くなってた。それは、まあ、織り込み済みだったんだが、それがさらにブラック・ダイヤモンドの歪(ひず)みを増大させてたんだ。その歪みは、『願いが叶わなかった』っていう、マイナスの想い。その強力な負のエネルギーのせいで、大陸や世界に天変地異が相次いで起きていた」
 息を吐き、賢は言った。
「調和の力がうまく機能すると思ったのだけれど、人々の欲望の方が、はるかに大きかったって事。ホープ・ジュエルでは支えられないほどに」
 そして、また一同を見渡す。
「ホープ・ジュエル七つの力を合わせると、失われた何かを復活させることが出来る。そんな言い伝えがあるそうね? もうわかったと思う。復活する何か、それは……」

 賢、聖、巫が右手の平を開いて、天に向けて掲げる。すると。
「……? え?」
 ナイトは、自分の体が光に包まれるのを見た。いや、ナイトだけではない、ウィッカも、クレリックも、アーチャーもダンサーも。そして、光が胸の前で一つの玉になる。それは。
「……ホープ・ジュエル……」
 ホープ・ジュエルだった。夢華たちから抜けた五つのホープ・ジュエル、キララが下げているホープ・ジュエルが賢たちの頭上に集まる。賢から紫色の光が放射されたと思ったら、まばゆい虹色の光が辺りに放射された。そしてそれが収まった後、そこには。
「○リキュア……」
 夢華は呟いた。聖は、武士が着るような鎧をドレスにしたような青い服に、赤とオレンジに輝く刀を持っていた。巫は巫女が着るような服(夢華の知識にはないが、水干(すいかん)という)をアレンジしたような赤と白のドレスに、黄色い鈴の付いた青緑の杖を持っている。
 そして、賢は、十二単衣をアレンジしたような、白と紫のドレスを着て、手には、赤紫色の、直径三十センチぐらいの鏡を持っていた。
 賢……○ュアウィズダムが言った。
「ホープ・ジュエルが一つになってレインボー・ダイヤモンドになれば、封印に使われていた私たちの力も実体化する……○リキュアも復活するということ。でもね?」
 と、ウィズダムは一メートルほど頭上で、ゆっくりと回転しながら輝いている、両手で包むほどの大きさの、ブリリアントカットの宝玉を見た。宝玉が降下し、ウィズダムの両掌に収まる。
「これが復活するということは、再びエネルギーの暴走が始まるということでもある。私たちは、これからカーナ・シー・エンパイアへ行き、ブラック・ダイヤモンドと、エネルギー中和を行ってくるわ」
 聖……パラディンが言った。
「一時的だろうけど、向こうで起きているだろう、異変をおさえることが出来る。そうすれば、こっちに怪物たちも現れなくなる」
 巫……シャーマンが言った。
「あとのことは、また考えるわ。……分割すると、同じ事になるだろうから、他の手になるけど」
 ウィズダムが微笑んだ。
「人間界……あなたたちには、迷惑をかけたわね。もう会うこともないと思う。短い間だったけど、あなたたちに会えて、うれしかったわ」
 そして「道」を見る。三人はうなずき合って、もう一度、夢華たちを見て、笑顔になる。再び「道」を見て、三人は駆け上がっていった。駆け上がる端(はし)から道は消え、やがて、三人の姿は空に消えて行った。


(ファンタシーサガ ○リキュア・しょの12 了)


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