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作品名:ファンタシーサガ ○リキュア! 作者:ジン 竜珠

第86回  
「え、と。私が、前、住んでたところで通っていた学校の、先輩です! 夏休みなので、こっちに遊びに来たそうです!」
 午後七時。シェアハウスで、エミィはキララのことを紹介した。
 家主の貴奈が言った。
「ようこそ、キララちゃん。私がここのリーダーの、山背貴奈です」
 貴奈の、向かって左に座る、るり子が笑顔で言った。
「私は、葉嶋(はしま)るり子。市内の事務機器メーカーのOLです」
 そして、るり子の向かいに座る苑美が言った。
「木部苑美、大学生。よろしくね、キララちゃん!」
 キララがお辞儀をする。
「キララです。よろしくお願いします」
 貴奈が言った。
「ごめんね、本当ならもっと豪勢なお夕飯、用意するべきなんだけど」
「そんな! 私の方こそ、急に押しかけちゃって、すみません!」
 恐縮するキララに、苑美が言った。
「いつまでこっちにいんの?」
 キララはエミィと顔を見合わせる。「ファン・タ・シー・キングダムの結界が解除されるまで」だが、具体的に「何日」というのはわからない。だが、「さあ?」と答えるのも、どうか?
 なので、うなずいて、エミィは言った。
「……実は今、キララさんのご両親が、海外へ出張してるんです。そのお仕事がちょっと長引きそうで。近くに親戚もいないし、だったら、こっちに来ませんか、って私がお誘いしたんです」
「そっか」と、貴奈が柔らかい笑みを浮かべる。
「じゃあ、それまで、こっちにいるってことで! ただ、もう空き部屋がないんだ」
 すまなさそうに貴奈が言うと、エミィは答えた。
「それなら気にしないでください、私と相部屋で」
 キララもうなずく。
「じゃあ、歓迎会はまた今度っていうことで! いただきまーす!」
 貴奈の号令で、夕食が始まった。

 そして。
「王女様、どうかベッドで!」
 エミィは深々とお辞儀をして言う。
「そうはいかないわ。今は、私の方が居候なんだもの」
 キララは首を横に振る。
「そういうわけにはまいりません! ぜひ、王女様がベッドをお使いください!」
 だが、エミィは引き下がらない。
「いえ、私の方が床にお布団で!」
 キララも、そう簡単に引き下がるつもりはないらしい。
「そうはいきませんったら!」
 エミィは、土下座しそうな勢いになった。
 少しして。
「それじゃあ、一緒に寝ましょ、エミィ?」
 笑顔でキララは言う。両の頬が熱くなるのを感じ、エミィはうろたえながら言った。
「めめめめめめめめめ、滅相もない!! そんな畏れ多いことととととと!!」
「命令よ」
 冷たい、とまではいかないが、キララはちょっとばかり高圧的に言った。
「……」
「王族の命令が聞けないの?」
 キララは困ったような顔になっている。
「……かしこまりました」
 エミィがおずおずと答える。
 キララが満面の笑みを浮かべた。エミィも微笑む。
 そして、夜は更けていった。


(ファンタシーサガ ○リキュア・しょの11 了)


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