「え、と。私が、前、住んでたところで通っていた学校の、先輩です! 夏休みなので、こっちに遊びに来たそうです!」 午後七時。シェアハウスで、エミィはキララのことを紹介した。 家主の貴奈が言った。 「ようこそ、キララちゃん。私がここのリーダーの、山背貴奈です」 貴奈の、向かって左に座る、るり子が笑顔で言った。 「私は、葉嶋(はしま)るり子。市内の事務機器メーカーのOLです」 そして、るり子の向かいに座る苑美が言った。 「木部苑美、大学生。よろしくね、キララちゃん!」 キララがお辞儀をする。 「キララです。よろしくお願いします」 貴奈が言った。 「ごめんね、本当ならもっと豪勢なお夕飯、用意するべきなんだけど」 「そんな! 私の方こそ、急に押しかけちゃって、すみません!」 恐縮するキララに、苑美が言った。 「いつまでこっちにいんの?」 キララはエミィと顔を見合わせる。「ファン・タ・シー・キングダムの結界が解除されるまで」だが、具体的に「何日」というのはわからない。だが、「さあ?」と答えるのも、どうか? なので、うなずいて、エミィは言った。 「……実は今、キララさんのご両親が、海外へ出張してるんです。そのお仕事がちょっと長引きそうで。近くに親戚もいないし、だったら、こっちに来ませんか、って私がお誘いしたんです」 「そっか」と、貴奈が柔らかい笑みを浮かべる。 「じゃあ、それまで、こっちにいるってことで! ただ、もう空き部屋がないんだ」 すまなさそうに貴奈が言うと、エミィは答えた。 「それなら気にしないでください、私と相部屋で」 キララもうなずく。 「じゃあ、歓迎会はまた今度っていうことで! いただきまーす!」 貴奈の号令で、夕食が始まった。
そして。 「王女様、どうかベッドで!」 エミィは深々とお辞儀をして言う。 「そうはいかないわ。今は、私の方が居候なんだもの」 キララは首を横に振る。 「そういうわけにはまいりません! ぜひ、王女様がベッドをお使いください!」 だが、エミィは引き下がらない。 「いえ、私の方が床にお布団で!」 キララも、そう簡単に引き下がるつもりはないらしい。 「そうはいきませんったら!」 エミィは、土下座しそうな勢いになった。 少しして。 「それじゃあ、一緒に寝ましょ、エミィ?」 笑顔でキララは言う。両の頬が熱くなるのを感じ、エミィはうろたえながら言った。 「めめめめめめめめめ、滅相もない!! そんな畏れ多いことととととと!!」 「命令よ」 冷たい、とまではいかないが、キララはちょっとばかり高圧的に言った。 「……」 「王族の命令が聞けないの?」 キララは困ったような顔になっている。 「……かしこまりました」 エミィがおずおずと答える。 キララが満面の笑みを浮かべた。エミィも微笑む。 そして、夜は更けていった。
(ファンタシーサガ ○リキュア・しょの11 了)
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