平安時代の終わりから鎌倉時代初め頃のこと。この町で、人々の邪悪な欲望から生まれた魔物が、暴れていた。それを鎮めるために、都から、ある貴族の姫が、男装の女性武士、巫女とともに、やってきた。姫は、賢所(かしこどころ)にある八咫鏡のレプリカ、その神鏡(しんきょう)から御魂(みたま)を移した神器を手に、不思議な力で魔物を退治ていった。しかし、魔物が姿を見せなくなった頃、三人も姿を消した。人々は魔物を倒すのと引き換えに、三人は天に召された、と考え、社(やしろ)を作って、あがめた。
「そのお社(やしろ)は、どこにも残ってないから、ただの昔話って思ってたけど」 夢華は苦笑いを浮かべて、言った。 「聞いたような、覚えてないような……」 友希が答える。 「私の小学校では、授業では教えなかったけど、図書室で、そのお話を読んだことはあります」 マーブ・シーが聞いた。 『その、ヘイアンジダイの終わり頃というのは、いつ頃ですか?』 「お話の中ではっきりと、何年、というのはなかったんですけど。鎌倉幕府の成立が一一〇〇年代終盤ですから、大体、八百二十年ぐらい前らしいです」 『そちらの時間で、八百二十年前ですか……。その邪悪な欲望から生まれた魔物、もしかしたら、ジャ・ヨクボーグかも知れません』 夢華が聞いた。 「じゃよくぼーぐって、なんですか?」 『当時、カーナ・シー・エンパイアが送り込んできた怪物です。ミミック・モンスターよりも、何段階もレベルが上の化け物です』 「シツボーグとか、ゼツボーグみたいなものか」と、祈璃が呟いた。 『もし、そのお話と繋がっているとしたら。……その時の三人が、○リキュアになった……』 その時、映像が揺らぎ始めた。 『今日はここまでのようです。キララ、こちらはまだ、結界を解くことが出来ません。国を流れるエネルギーラインの修復魔法が完了するまで、もう少し時間が必要なのです。……○リキュアの皆さん、どうかそれまで、キララを護って……』 そして、通信は終了した。 「お母様……」 キララが目を閉じ、祈る仕草をする。彼女が祈るのは、母の無事だけではないだろう。 愛望が言った。 「……思ったんだけど」 祈璃が聞く。 「なに?」 「この間、言ったでしょ、八百年前、例の遺跡で三人の乙女が、っていうお話。ひょっとして、その時の七つの玉って、ホープ・ジュエルだったんじゃ……!」
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