午前九時半。賢、聖、巫は、夢華たち五人の案内で、例の遺跡に来ていた。 到着し、しばらくして巫が言った。 「……ここ、繋がってるわ」 賢が聞く。 「繋がってる、って?」 「ファン・タ・シー・キングダムと」 ややおいて、聖が眉間にしわを寄せて言った。 「はあ? ここが、ファン・タ・シー・キングダムと繋がってる?」 「ええ。おそらくそれを知っていた古代の人たちが、ここに祭祀場を作ったのね」 賢が何かに気づいたように、言った。 「そうか、だから、ここにホープ・ジュエルが引き寄せられたのね……」 「じゃあさ」と聖が言った。 「あたしたちがここじゃなくて、夢橋島(ゆめはしじま)に降りたのは、なんでだ?」 「仮定だけど。私たちが○リキュア『だったから』、かな?」 夢華たちには、意味不明の会話だ。賢が引き続き、言う。 「もし、ここがファン・タ・シー・キングダムと繋がっているとしたら。ねえ、夢ちゃん、ここで昔、それこそ何百年も昔、なにかの『事件』がなかった?」 巫が聞く。 「どういう意味?」 「ファン・タ・シー・キングダムがカーナ・シー・エンパイアから襲撃を受けた時。もしここがファン・タ・シー・キングダムと繋がっているのだとしたら、何かがあったんじゃないかって」 聖が「なるほど」と呟くのを聞きながら考えるが。 夢華は首を横に振る。 「私は知らないけど。……愛望先輩は?」 「私も知らないわ。友希ちゃんは?」 「すみません、私も聞いたことないです」 愛望が答えた。 「ちょっと、図書館で調べてみます」 「あー、すみません、今日は私、ちょっと用が」 一同の視線が集まる中、夢華は答えた。 「今日は、おじいちゃんと一緒に猫サガしをするんです」 友希が聞いた。 「猫サガし、ですか?」 「えへへ。そうなんだ。だから、ゴメン!」 と、夢華は手を合わせ、拝む仕草をする。 みんなが笑顔になる。 「ああ、そうだ」と、聖は持参したバッグから、一枚の絵を出す。スケッチに色鉛筆で彩色(さいしき)しただけの人物画だ。 「友ちゃんに、おみやげ」 「私にですか?」 と、その絵を受け取った友希だったが。 「……この絵……!」 友希が驚愕の表情を浮かべる。 聖が言った。 「その絵を描いたヤツが伝えてくれって。心配かけてゴメン、ってさ」 友希が左手で絵を持ち、右手で口を覆う。その瞳に、みるみる涙があふれてきた。 「今はまだ君に会えないけど、落ち着いたら、会って欲しいって」 「……はい、はい……」 「……元気にやってるよ、あいつ」 友希が何度も何度もうなずく。その頬を、涙が伝っていった。その涙は、夢華には、哀しい涙ではないように思えた。
夢華たちが帰って行った後、巫たちはドーム球場ほどもある広場の中央に来た。巫は正座し、静かに精神統一する。やがて、彼女を中心として、その周囲に七本の石柱が再現された。だが実体ではない、残留するエネルギーの記憶だ。 そして、あちこちにも、石柱や、磐座(いわくら)が再現されていく。 「間違いないわ。ここ、ファン・タ・シー・キングダムと繋がってる。そして、この石柱がおそらく、……ホープ・ジュエルと繋がっている」 石柱に囲まれた範囲の外で、石柱を見上げながら、賢が言った。 「そうか。だから、あの時、七つのホープ・ジュエルに……。とすると」 巫がうなずく。 「聖、承平さんが描いた絵を、……希望に満ちあふれた絵を、ここに」 「おう」 聖がスケッチを持って、巫のところに行く。 「ここなら、もしかしたら○リキュアたちに力を与えてくれるかも……」 そう呟いて、巫が精神を集中し始めた。
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