島に帰ってきた聖は、とりあえず民宿の二階へ上がった。 「承平、いいかな、入るよ?」 ふすまを開ける。床一面に、スケッチブックから切り離した紙が散乱していた。様々な絵が描いてある。そして。 「……ふう」 息をついて、承平が振り返る。 「ああ、聖」 「……まさか、夕べからずっと描いてたのか?」 「……ああ」 と、承平が笑顔になる。 「……夢を見たんだ」 「夢?」 床のある絵を拾って、聖は承平を見る。 「うん。一度目は、正直なところ、意味不明だったんだ。でも、午前中、ちょっと仮眠をとった時、また同じ夢を見た。そうしたら、その時は夢のメッセージがハッキリとわかったんだ。まるで録画した映像のノイズがとれたみたいに」 「へえ、メッセージか。なんなんだ、それ?」 聖が聞くと、「笑わないでくれよ」と断った上で、承平は言った。 「『私があなたが救われるように人を呼んだのは、あなたに役目を果たして欲しいから。だから、あなたの力を使って、○リキュアを助けてあげて。そのためにも、生きて』。相変わらず意味不明だけど、そのあと、光の渦が見えて。その渦がなんなのかわからないけど、それを見た時、無性に『なにか』を描きたくなって。心が命じるままに、いろいろと描いていたんだ」 「そうなんだ」 柔らかい気持ちが胸にあふれる。承平にメッセージを送ったのが、何者か、聖にはわからない。賢辺りに言わせると、承平の心の中の生きる力、ということになるだろう。あるいは、巫なら、承平を護るガーディアン、と答えるだろうか? そして、ふと、承平が持つスケッチブックを見る。 「……その絵……!」 「ん? ああ、これ? これもなんだか、無性に描きたくなって」 承平からスケッチブックを受け取る。そこにあるのは、見覚えのあるポニーテイルの少女の姿。少女は明るい笑顔を浮かべている。しばらく考えて。 「なあ、承平。これも含めて、ここにある絵、全部、あたしにくれないかな?」 「え?」 承平が怪訝な表情になる。 「頼む!」 その表情に何を見たか。 承平は笑顔になった。 「……ああ。今、夢の木市では、怪物が現れて暴れるっていう事件が起きてる。それを○リキュアっていう女の子たちが解決してるんだけど。……なんか、聖に渡したら、○リキュアたちに伝わるような気がするんだ。……変かな?」 聖は笑顔で言った。 「うん、変!」
|
|