「……」 夢華は、この頃、何者かの視線を感じている。振り返ると、誰もいないのだが、たまに上靴の先っぽが、廊下の曲がり角から見えていたり、階段の踊り場にある大鏡に、こちらを伺っている男子の姿が映っていたり。 放課後、その話をすると、エミィが言った。 「それってさ、えーと、なんていったっけ、ストッカー?」 愛望が訂正する。 「それをいうなら、ストーカーよ、エミィちゃん。……ねえ、本当なの、それ?」 「うーん……。はっきりストーカーって、思った訳じゃないんです」 その時、部活へ向かう友希の姿が見えた。友希がこちらに気づく。そして、こちらへ来た。 「どうかしましたか、皆さんで集まって?」 「ああ、友ちゃん。実はね……」と、夢華はストーカーらしき影の話をする。 ちょっとおいて。 「それ、私、見たかもしれません」 友希が言った。 「えっ!? ほんと、友ちゃん!?」 夢華はギョッとなる。 「はい。一昨日、夢華先輩を一階の廊下で見かけて、声をかけようと思ったら、後ろをつかず離れずって感じで歩く男子がいて、夢華先輩が階段を上がったら、その男子も階段を上がって、二階に上がっても、その男子が後ろにいて。……その男子、三年生だったんです。だから、『おかしいな』って思って、覚えてるんです」 夢の木中学校の校舎は、一階が三年生、二階が二年生、三階が一年生になっている。また、履いている上履きにはラインが入っており、その色は、一年生が青、二年生が赤、三年生が緑だった。 愛望が聞いた。 「誰か、わかる?」 「すみません、わかりません。少なくとも、武道場では見たことがないので、男子の柔道部とか剣道部の人じゃないと思います」 エミィが言った。 「魔法で調べようか?」 それを聞き。 「うーん。そこまでしなくてもいいかなあ? もう少し、様子を見よう」 「夢ちゃんがそれでいいなら、かまわないけど」 と愛望が言うと。 「言ってくれたら、いつでも撃ちますよ? たまには動く的もいいかな、と……」 友希が言った。 引きつった笑みを浮かべて夢華が言った。 「う、うん、ありがと、友ちゃん……。でも、遠慮しとくね」 「そうですか」 と、友希は残念そうに言って、部活に向かった。
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