「これが、マップか。確かに不完全だね」 賢が、エミィの持つマップを見て、言った。 今、夢華たちは町公民館、そのロビーにいる。 閉館時間まで、あとわずか。今日は、賢たち三人は、いったん、島に帰るという。 聖が言った。 「なあ、この白いのと、青いのと、赤いの。ウィズダムのエンブレム、あたしのエンブレム、シャーマンのエンブレムの一部に見えるけど?」 エミィがうなずいた。 「そうじゃないか、とは思ってたんですけど。やっぱりそうでしたか……」 巫が聞いた。 「エンブレムがあるのって、この町のどこになるの?」 それに応えたのは、愛望だ。 「青いエンブレム……パラディンのエンブレムがあるのは、市の西部。ここには、市で一番高い山があります。白いエンブレム……ウィズダムのエンブレムがあるのは……。ここは多分、夢の木中学校かしら? 赤いエンブレム……シャーマンのエンブレムがあるのは、市の東南部。海水浴場の北東部、かしら? 確か、ここは……」 夢華が挙手した。 「はいはーい! ここ、遺跡がありまーす!」 賢たち三人が、夢華たちを見る。賢が聞いた。 「遺跡? なんの?」 「えーと」と夢華は考える。近所……というほどではないが、自宅からの徒歩圏内であり、小学校の頃には、社会科見学で訪れたこともあるが、それほど注意した訳ではない。そもそも遺跡とはいっても、何か建物とかがあった訳ではなく、だだっ広い広場がある、その程度の認識しか持っていないのだ。 「えへへ」 なので、笑ってごまかす。ため息をついて、友希が言った。 「古代の祭祀場跡といわれています。もはや推測するしかないそうですが、環状列石や、何らかの、建物以外の構造物を立てていた痕跡が見られるそうです」 巫が顎に手を当てて考える。 「祭祀場の跡……」 チャイムが鳴った。閉館時間だ。 立ち上がり、賢が言った。 「マップの欠片(カケラ)については、私たちの方でも、サガすようにするわ。……といっても、どこまでできるかわからないけど」 「お願いします」 とエミィがお辞儀した。
船を係留してある港へ向かいながら、賢は言った。 「あの時、私が手にしたバイオレット・アメジスト、聖が手にしたインディゴ・サファイヤ。人間界に来た衝撃で手から離れてしまったけど」 聖がうなずく。 「多分、その場所に落ちたんだろうね。でも、さ。他の五つのホープ・ジュエル、どうしてあの子たちが手にすることになったんだろう?」 巫が答える。 「推測なのだけれど。ホープ・ジュエルは夢の結晶のようなもの。強く夢の力を抱いている人に反応して、引き寄せられたのじゃないかしら?」 賢も聖もうなずいた。 「とすると、この先、また強い夢の力を抱く人が現れたら、そっちに引き寄せられる、ってことか。賢、その前に手を打った方が良くないか? 下手をすると、一ヶ所にホープ・ジュエルが集まっちまう」 「それは、大丈夫じゃないかしら? ホープ・ジュエルは○リキュアの力として実体化しているようだから、一つに合わさることはないと思う。ということは」 と、賢は立ち止まる。 「当面、考えられる、危惧すべきことは、あの子たちが倒されて、ホープ・ジュエルが分離すること。○リキュアの力じゃなく、ホープ・ジュエル単体となった時、おそらく引き合ってしまうと……」 聖が息を呑む。 「……ヤバいな。残り二つのホープ・ジュエルも引き寄せられて、一気に一つになることもあり得るってことか」 「ええ。だから、私たちも、全力であの子たちを護らないと!」 巫が言った。 「それなのだけれど。わたし、あの祭祀場跡、とかいうのが、何かの『鍵』になっている気がするわ」 「鍵?」と、聖が首を傾げる。 「よくわからないのだけれど」 と、巫は考える素振りを見せる。 しばらくして。 「とにかく、帰って善後策を練りましょ」 賢が言うと、聖も巫もうなずいた。
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