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作品名:ファンタシーサガ ○リキュア! 作者:ジン 竜珠

第57回  
 その時だった。
「○リキュア!!」
 少女が叫ぶ声がした。ナイトはどうにか体を起こして、その方を見る。十数メートル先に、三人の少女がいる。
「……いけない、ここから、逃げて……」
 振り絞った声が、届いたかどうか。
 少女たちは手に手に、何かを持っている。それは遠目には、透明なカードに見えた。
「これを使いなさい!」
 そして、こちらへ投げてきた。そのカードのようなものは、正確にナイトたちのもとに届く。それを手にした瞬間、情報が流れてきた。
「……これは……!」
 驚きとともに、カード……透明なページを見る。五人はうなずき合い、痛みをこらえて、立ち上がった。そして。
 ナイトは言った。
「光の章! 聖なる刃(やいば)!」
 ウィッカが言った。
「智恵の章! 聖なるきらめき!」
 クレリックが言った。
「召喚の章! 聖なる指!」
 アーチャーが言った。
「雷(いかづち)の章! 聖なる矢!」
ダンサーが言った。
「舞の章! 聖なる瞳!」
 五人の声が揃う。
「○リキュア、クィンクエ・ペタルム!」
 五人の光が集まり、五芒星に似た桃色の光を持つ花になる。そしてその花がゼツボーグに重なり、回転する。その光に包まれ、ゼツボーグが消滅した。
「……なんなの、これ……!?」
 憎々しげに言って、アイ・スクリームが三人の少女の方を睨む。だが。
「……いない!? どこへ……!?」
 しばらくあちこちを見ていたが、やがて舌打ちをして、姿を消した。
「なんとか勝てたね……」
 そう呟き、ナイトはスクエアミラーを見る。だが。
「……あ」
 挿し込んだページは、ヒビが入り、やがて、空気にかすむように、消え去った。
「やっぱり、今の君たちじゃ、使いこなせないか」
 不意に、声がした。振り返ると、さっきの少女たち。どこか物陰に隠れていたらしい。そして、この三人に、ナイトは見覚えがあった。
「あなたたち、夢ヶ谷市ですれ違った……!」
 ボブヘアの少女がうなずく。
「あの時は、全然、わからなかった。私たち、ほぼ普通の女の子だから」
 そして、他の二人を見てから言った。
「私の名前は、さとる、こっちは、ひじりで、こっちがかんなぎ。そして」
 と、ナイトを見る。
「私たちは、○リキュアよ」
 ナイトたちはしばらく反応出来なかったが。ウィッカが言った。
「まさか、伝説の……!」
 三人がうなずいた。
 さとるが言った。
「私の名前は○ュアウィズダム」
 ひじりが言った。
「あたしの名前は○ュアパラディン」
 かんなぎが言った。
「わたしの名前は○ュアシャーマン」
 ナイトたちが絶句していると、ウィズダムが言った。
「もっとも、今の私たちに、○リキュアに変身する力はない。なぜ、数百年の時を超えて、私たちがここにいるのか、なぜ私たちが変身能力を失っているのか。すべてを話すには、あなたたちの準備がない。だけれど。……私たちはあなたたちを助けるために来た。これだけは言っておくわ」
 ウィズダムが瞳に強い光を宿して言った。
 ナイトは困惑するだけだった。

「先生、内崎さんが帰ってきました!」
 ある看護師が、のぞみに伝える。
 エントランスに行くと、少女・内崎咲子がいた。咲子は深々と頭を下げる。
「心配かけて、ごめんなさい。腕を切るって聞いて、私……」
「……いいのよ。誰だって、そんな話、聞かされたら動揺するもの」
「私、街をふらふらしてて、どこかでボウッとしてたらしいんです。そしたら、その時……」
 ここで、咲子は言葉を止める。
「その時? ……何かあった?」
「……とても不思議なんですけど。暖かい『何か』に包み込まれるような感じがして、声が聞こえてきたんです」
「声?」
 咲子はうなずいて言った。
「『諦めないで。腕一本で活躍している選手もいるのよ。だから、絶望しないで』……。とても柔らかくて、素敵な声でした」
 澄み切った笑顔で咲子は言う。
「……そう」
 のぞみの胸にも暖かいものがあふれる。その声の正体については詮索はすまい。その種の「メッセージ」について、ある医師に言わせると「その人間の潜在意識からのメッセージ」だそうだが、のぞみはそこまで合理的に考えなくてもいいと思っている。
 今、街では怪物が暴れていて、その怪物を○リキュアという少女たちが退治しているそうだ。もしかして、その声の主は、○リキュアだったりしないだろうか?
 ひょっとしたら、彼女たちが戦う相手は、咲子のような人々が抱く絶望なのかも知れない。
 ふと、そんなことを思ってみた。


(ファンタシーサガ ○リキュア・しょの7 了)


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