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作品名:ファンタシーサガ ○リキュア! 作者:ジン 竜珠

第55回  
 撮影を終え、夢華・エミィ・祈璃は帰路についていた。
 時刻は午後三時。電車の中で、おしゃべりをしている。
「撮影前に話に出た内崎(うちさき)さん、お嬢さんが、ご病気なの」
 祈璃が言った。
 エミィが聞いた。
「病気、ですか?」
「うん。骨肉腫、っていってね。骨のガンって言われてるんだって」
 ちょっとした衝撃が夢華の胸をつく。
「ガン、ですか……?」
「うん。右肩に出来ているそうなんだけど。検査の結果が思わしくなくて、もしかしたら、腕を切らなきゃいけないかも知れないって、この間、言ってたんだ」
 エミィの表情が沈む。
「そうなんですか……」
 うなずいて、祈璃は言った。
「私には想像出来ない。もし『腕を切ります』なんて宣告されたら、私だったら、絶望するだろうな」
 夢華もエミィもうなずくしか、できなかった。

 今日は、部活動だった。
 学校からの帰り、友希は愛望と会った。
「愛望先輩」
「ああ、友希ちゃん。制服、ってことは。部活だったの?」
「はい。愛望先輩は?」
「私のお姉ちゃん、駅向こうの病院で看護師やってるの。忘れ物してるから、届けに行くところなのよ」
「そうですか。ご苦労様です」
 駅向こうの病院というと、かなり大きい病院だ。ここからなら、バスに乗って、ちょっとした高台に上がることになる。
 ちょうど友希の進行方向だ。なので、途中まで一緒に行くことにした。目抜き通りに来て、しばらく歩いた時だった。通りの向こうで悲鳴が聞こえた。
 何だろうとその方を見ると。
「……ゼツボーグ……!?」
 三階建ての建物の向こうに、巨体が見えた。
 愛望が呟いた。
「……あんな巨大なゼツボーグ、初めて……!」
 拳を握りしめ、友希は言った。
「先輩、行きましょう!」
「ええ!」
 答えた愛望は、スマホで連絡を取り始めた。

 行った先にいたゼツボーグは、体高が十四、五メートルありそうだった。白い体に、鎧兜、顔にあるのは、三つの黒い穴。二つは目で、一つは口のようだ。そして黒い目の穴からは、黒い涙のようなものが、絶えず流れている。ゼツボーグの右腕はラケットになっていた。
『ゼツボォォォォォォォォォグ・アルノミィィィィィィィィィ!』
 咆哮とともに、ゼツボーグが右腕を振り上げる。ガットの中心に黒い影が浮かび、シャトルコックになる。そして、腕を振り下ろすと、シャトルコックがミサイルのように撃ち出され、アスファルトの地面に激突して、爆発する。着弾点から、闇が急速に広がっていった。
「お待たせ!」
 夢華たちが駆けつけた。ちょうど、駅舎を出たところで、連絡が来たのだという。
 ゼツボーグを見上げ、友希たちはスクエアミラーを構えた。

 のぞみがコーヒーを飲んでいると、携帯に電話がかかってきた。
「……祐理愛? あの子、今日は夜勤だったわよね、どうかしたのかしら……? 愛望が忘れ物を届けに行ってたけど? ……もしもし?」
『あ、お母さん!? あの子……内崎さんの姿が見えないの!』
「……なんですって!?」
『朝から、様子がおかしかったらしいんだけど! 今あちこち、探したんだけど、院内には、いないかも!』
「わかった! お母さんも、すぐに行くわ!」
 電話を終え、のぞみは出かける準備をした。


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