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作品名:ファンタシーサガ ○リキュア! 作者:ジン 竜珠

第52回  
 夢華は、今日はエミィと、祈璃のスタジオ見学に行くことになっている。東にある街に、近隣では最も大きなスタジオがあり、遠方からも撮影のために人が訪れるそうだ。中央からのロケが来る時などは、このスタジオが撮影のステーションに使われるという。
 日曜日ということもあって、利用者が多いということだが、祈璃の場合、常連であり、フォロワーも多く、しかもいずれプロデビューすることが決まっているということから、優先的にスケジュールを押さえさせてもらっているという。
「本当は、いけないんだけどね」と、女性事務員が苦笑を浮かべて言っていた。
「祈璃さん、あの緑色の一角、なんですか?」
「ああ、あれは、クロマキーだね」
 ちょっと考えて、夢華は思い出した。
「ああ、昔、プロ野球球団にいたっていう、外国人選手の人? おじいちゃんから、聞いたことある!」
 どこかで誰かが「それ、クロマティな」と言うのが聞こえた。
「? 夢華が何のこと言ってるのか、さっぱりわからないけど。あれは、背景を合成する仕組みだよ」
「背景を合成? ……え!? もしかして、背景って、合成だったんですか!?」
 驚いたからか、よくわからないが、祈璃はちょっと苦笑いを浮かべて言った。
「……もしかして、夜の都会をバックに道路で歌ってたの、アレ、マジだと思ってた?」
 夢華は何度もうなずいた。
「……ああ、そうなんだ」
 そして背景の合成について話していると、一人の若い男性がやってきた。
「祈璃ちゃん、今日は僕が仕切るから、よろしくね」
「ああ、かのさん」
 と、祈璃は笑顔で言う。
「今日は、うちさきさんは、お休みですか?」
「かの」という若い男性はうなずいた。
「お嬢さんが、ちょっとたいへんらしくて」
「……たいへん、って、やっぱり……」
 かのはうなずいた。
「温存は無理かも、ってことらしい」
 正直、夢華の知らない話になったので、ふと、エミィを見る。エミィは、トートバッグの中を見ていた。
「どしたの、エミィ?」
「うん」と、エミィは小声で答えた。。
「ちょっと前から、ウッキュー、ちょくちょく眠ってるの」
「……もしかして、なんかの病気とか?」
 心配になって、夢華もバッグの中をのぞき込む。すやすやと、ウッキューは眠っていた。
「それは違うみたいなんだけど。ある種のパートナーアニマルとか、モンスターは、成長期によく眠ることがあるから、ひょっとしたらそれかも知れないけど」
 そうは言いながらも、エミィは心配そうだ。そもそもウッキューは、エミィが人間界に来た時、一緒にいたのだという。一人で心細かったエミィに、まるで寄り添うようにいてくれたことから、エミィはウッキューのことを心の友と思っているところがあるようだった。
「大丈夫だよ! 多分、成長期!」
 エミィが少し弱気の笑みで「きっと、そうだね」とうなずいた。


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