午前十時、その女性は、公園のベンチに座っていた。女性は涙ぐんでいる。 「なによう、あんな男。全然かまってくれなかったくせに、『相性が悪いみたいだから、終わりにしよう』とかって。バカじゃないの!?」 そして、バッグから小さなポーチを出し、ファスナーを開け、中を見る。 「……あいつがくれた、初めてのプレゼント……。何よ、こんなもの!」 適当に投げようとしたら、誰かの手が、背後からそれを止めた。振り返ると、そこにいたのは、中学生ぐらいの女の子。ちょっと普通じゃない格好をしている。 「いけないなあ、お姉さん。ゴミはゴミ箱、だよ? みんなの迷惑になる」 と、ニヤリ。 確かにそうだ、と思い、女性は辺りを見る。 誰もいなかった。 「……うそ、さっき、ここに入った時は、いっぱい人がいたのに……!」 「きっと、お姉さんの素敵な『色』に、みんな恥じ入って、出て行ったんだと思うわよ?」 そして、少女はポーチを見る、口が開いていたので、中身が見える。少女が中をのぞき、その表情が固まる。 「……お姉さん、さっき、これのことを『初めてのプレゼント』って言ったわよね? これくれたの、カレシ?」 「……うん」 鼻をグシグシ言わせながら女性はうなずいた。 「……そう、これ、カレシからのプレゼントなんだ……」 「もう、絶望しかないわよう! 恋人に振られるなんて!」 女性が泣き出した。 少女は、なんだか、困惑したような表情だが。 「まあ、ゼツボーグを生み出す条件は満たしてるし」 そんなことを言って、少女は右手の平に、黒く濁った玉を出現させた。
連絡をくれたのは、祈璃だった。クラスメイトと、市の中心部に買い物に行く途中で遭遇したのだという。夢華も、外出してたし、エミィも何かの相談があるとかで愛望と合流していたという。そして、友希も駆けつけた。 『ゼツボォォォォォォォォォグ!』 雄叫びを上げるゼツボーグは、銀色の金属的な存在。包丁の取っ手、といった風情の形をしている。 「みんな、行くよ!」 夢華が号令をかけた。
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