変身して、海面を走り、戦場へ駆けつける。 「クレリック!」 うれしそうに、ナイトが言った。 「無事だったのね!?」 「ええ! ……それより、こいつ」 ウィッカが言った。 「ゴムみたいな弾力があって、物理攻撃が利かないの。魔法攻撃も、シールドを持った足で弾かれて!」 クレリックは大ダコを見る。どこかに弱点はないか? ウィッカが言った。 「ひょっとしたら、海に投棄されたゴミの中の、ゴム製品をもとに、体を構築しているかも知れない」 「え?」と、ダンサーが聞いた。 「そういうことってあるの?」 「うん。ミミックモンスターの中には、行った先の物質を使って体を作るものもあるの。そうやって、現実世界に存在を固定するの」 「そうか。もしゴムなら……」 クレリックは考え。 「みんな、私に考えがあるの! しばらく時間を稼いでいて!」 そして、そこを駆け出した。
クレリックが行った先は、先のカフェ。 「すみません!」 声をかけると、ウェイトレスが仰天していた。この格好の時は、髪の長さも色も違うし、何より魔力の影響で、知人でさえ、○リキュアの正体に気づけない。そのことは以前、シツボーグからクラスメイトを助けた時に、実感した。 「レモンをください!」 「え? レモン? えっと、ジュースとかの材料としてなら、あるけど」 ここでふと、クレリックは気づいた。そう、お店にとっては、レモンは商売道具だ。 「ちょっと待ってて!」 そして駆け出し、物陰に隠れていったん、変身を解除し、財布を確認する。帰りの交通費を差し引いて、千円札を出す。 「……くっ、今月のお小遣い……!」 しかし、そんなことを言っている場合ではない。再び変身し、ウェイトレスのところへ行って、言った。 「これで、買えるだけ! ……できたら、仕入れ値で売っていただけたら……」 ウェイトレスが、怪訝な表情になる。
戻ってくると、アーチャーとダンサーが脚に絡め取られていた。 「ナイト、これをマジックシールドを張る脚に浴びせて!」 ビニルの小さな買い物袋に入った十五個のレモンを投げる。それを受け取ったナイトが首を傾げた。 「レモン?」 「もし、このモンスターがゴムで出来てるとしたら! レモンに含まれるリモネンは、ゴムを溶かすことが出来るの!」 それを聞いてうなずくと、ナイトはジャンプしてレモンを、シールドを張る脚に投げつける。そして、魔力を込め剣でレモンをスライスすると、輪切りのレモンもろとも果汁が脚にかかった。しばらくして、その脚が溶けて消滅する。 ウィッカがすかさず、魔法弾を放つと、アーチャーとダンサーを捕らえていた脚が爆発する。 アーチャーとダンサーが海面に着地したのを見て、クレリックはタコを見た。破壊された脚の断裂面から、魔力で出来た「体の元」のようなものが見えた。クレリックは、手袋が描かれたページを出した。 「癒やしの章! 安らぐ手!」 クレリックの両手に、レースで出来たような手袋が現れる。 「○リキュア、ドリーム・クリアリング!」 手袋越しに癒やしのエネルギーが杖に伝わり、そのエネルギーが、無理矢理こちらに実体化している魔力を浄化する。 大ダコが消滅した。
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