カフェを出て、西へ歩く。途中、夢華は聞いた。 「エミィ、本物って言ったよね?」 「うん。ごく普通の木で作って、ペンキ塗った普通の箱だけど、魔力がこもってる」 愛望が聞く。 「この間の宝箱は、消えちゃったのよね?」 「はい。シェアハウスに持って帰る途中で。あれは、ファン・タ・シー・キングダムから来たものだから、多分、役目を果たした時点で、消えたんだと思います」 「それじゃあ、浜辺へ行って、宝箱をサガそう、オー!」 夢華が右の拳を空へ突き上げる。 途中にマリーナがあった。そして、こちらに向かってくる、三人の少女。高校生ぐらいだろうか? 一人は、ボブヘア。だが、おしゃべりをして横を向いた時に見えた限り、えり足の真ん中を伸ばしてるっぽい。頭が良さそうな美少女だ。 一人は、かなりのロングヘアだ。美少女、と言うより、清楚な美女と呼んだ方がいい、落ち着いた感じを持っている。 そして、もう一人は、ショートヘアのクセッ毛が印象的な、ボーイッシュな美少女。 自分も、高校生になったら、あんな風になりたいな、と思い、すれ違う時に夢華はなんとなく視線で追った。すると、エミィは立ち止まって、去って行く三人を目で追っているようだった 「どしたの、エミィ?」 「え? ……うん、素敵な人たちだな、って思って……」 しかし何やら、微妙な表情をしている。友希が聞いた。 「なにかありましたか、あの人たちに?」 エミィが首を傾げる。 「かすかなんだけど、魔力を感じたの。でも、気のせいかも知れない」 そしてもう一度、三人を見る。三人は横断歩道を渡るところだった。
目的の場所に着いた。まだ昼前。もう海開きをしているはずだが、誰もいない。やはり、昼前だからか? 夢華は辺りを見回す。さっそく一つ、見つかった。 大きさは、さっきのカフェで見たものより、一回りほど大きく、色は茶色。駆け寄って手に取ってみる。スクエアミラーを出し、そこからホープ・ジュエルを出し、ホープ・ジュエル越しに箱を見る。 「……うーん。私じゃわかんない。エミィ。ちょっと見てくれる?」 エミィが駆け寄り、自身のホープ・ジュエルで箱を見る。 「……うん。魔力があるけど、何か変なものはないみたい」 そばに来た友希が言った。 「ミミックモンスターじゃない、ってことですか?」 「うん」 エミィの返事を聞き、夢華はふたを開ける。しかし。 「……空っぽだ」 中には何も入ってなかった。 「こっちにもあったよ!」 祈璃の声がした。波打ち際だ。今度は逆に一回りほど小さい。色は緑。夢華たちはそこへ行く。エミィが「大丈夫」と言ったので、祈璃はふたを開ける。だが、やはり空っぽ。 すると。 「あ、あそこにも」と、愛望が海へ向かう。靴を脱ぎ、ソックスも脱いで、海に入った。膝まで入って、何かを拾う。かなり大きい箱だった。三十センチ四方の正方形、色は赤。 愛望がそれを持ってこちらへ歩き出した時、何もしていないのに、ふたが勝手に開いた。そして、そこから何かが現れ、空へ伸びた。それは。 「…………タコの足?」 愛望がそう言ったとき、箱が変身して、体高七、八メートルの大ダコが現れた! 「…………………………………………………………………………」 しばらく絶句していた一同だったが。 夢華が叫んだ。 「うええぇえぇぇぇぇぇぇぇ!? 大ダコォォォォォォォォ!?」 そして、一同がフリーズしている間に、タコの足が愛望を絡め取る。 「! みんな!」 叫んで、夢華がスクエアミラーをかざす。
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