「実は、このところ、ここに妙なものが漂着するらしいんだけど」 夢華たちは、画面をのぞく。そこにあったのは。 エミィが息を呑んで、言った。 「……宝箱……?」 祈璃がうなずく。 「この間、宝箱を見つけて、地図の欠片(カケラ)が入ってた、って言ってたよね? もしかして、こんな箱だった?」 夢華たちはうなずく。色や細部は違うが、全体的なデザインは似ているように思う。 「そうか……。これ、アーカイブなんだ。先月の放送分」 ちょうどその時、カフェのウェイトレスの若い女性がやってきた。エミィがオーダーしたパフェをテーブルに置いて、その時、祈璃のスマホが目に入ったらしい。 「あ、これ」 夢華たちがウェイトレスを見る。一同の視線が集まって、ちょっと驚いた風のウェイトレスに祈璃が聞いた。 「これ、話題になってますよね?」 当地の話だ、知らない人の方が少ないだろう。ウェイトレスがうなずく。 「ええ。ちょっとした騒ぎになってましたよ? この街に『ワニ姫様』っていう昔話があるんですけど、それを引き合いに出してる人も多くて。でも、中は空っぽだし、誰かのイタズラ、ってことで、今は落ち着いているんですけどね。……このお店にも、一個、置いてありますよ?」 エミィが身を乗り出した。 「ホントですか!?」 ウェイトレスが鼻白んでうなずく。 「見せてください!」 その勢いに、ウェイトレスがうなずき、一度、奥に引っ込む。ちょっとして、箱を持ってきた。色は黄色、縦十センチ、横十五センチ程度、高さは十センチぐらいで、アーチ状のフタがある。 「最初の頃は、拾った人は警察に届けてたらしいんだけど、あんまり数が多いんで、届ける人もいなくなって。珍しがる人は持って帰るけど、浜辺に転がったままになってたりして、ボランティアの人たちが海浜(かいひん)清掃の時に、持って帰ったりするの。ほら、海開きでしょ?」 エミィはいろいろと確認している。夢華も触ってみた。質感は木、だろうか? ウェイトレスが言った。 「警察じゃ、産業廃棄物の可能性とか考えて、調べたりしたらしいけど、ただの木箱だし、結局、迷惑防止条例違反で犯人探しをすることになったんですって」 何らかのマジックアイテムかも知れない宝箱が、産業廃棄物。あるいは、迷惑防止条例違反。そのギャップに戸惑いながら、夢華は小声でエミィに聞いた。 「どう?」 エミィがうなずく。同じく小声で「本物」と答えた。 エミィがウェイトレスに聞いた。 「これ、どこに行ったら、拾えますか?」 「ここから、西に行ったところに、海水浴場があるんだけど。そこに転がってますよ? 大体、毎日五個ぐらいかなあ?」 夢華たちは、顔を見合わせ、うなずき合った。
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