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作品名:ファンタシーサガ ○リキュア! 作者:ジン 竜珠

第31回  
 部活を終え、友希は帰路についていた。友希の家は、ちょっと遠い。だが、自転車は使わず、徒歩通学をしていた。脚力、特に足の指を鍛えるためだ。
 弓道ではないが、以前、武術をやっている者から聞いたことがある。
 剣(けん)や拳(けん)に気(き)を通すには、足の親指に力点を置き、手の小指に伝えろ。
 小さい頃に聞いたせいか、それが染みこんでいた。
 正門を出て、目抜き通りの方へ向かう途中だった。
「友ちゃん」
 と、声をかけてきた者がある。その方を見ると。
「承平お兄さん」
 昔からの知り合いの、村越承平だった。近くのアパートに一人暮らしで、アルバイトをしながら、絵を描いている。確か、この間、何かのコンクールに応募した、と聞いたが?
 近づき、友希は聞いた。
「そういえば、ちょっと出かけてたけど。どこへ行ってたの?」
「うん。コンクールの結果について、個人的に話したい、って連絡があって、審査員さんに会いに行ってたんだ」
「……個人的っていうことは、当選したの?」
 個別に呼び出しなど、そうとしか考えられない。だが、承平は寂しげに笑って、「落選だった」と言い、こう言った。
「僕の実力じゃ、プロは無理だって、宣告されたんだ」
「……そんなことないと思う。承平お兄さん、絵、上手だと思う」
 お世辞ではなく、本当にそう思う。夢の木市の東南から南は海に開けているが、そこの景色を描いた風景画は、とても美しかった。それだけじゃなく、心に訴えかける何かもあった。
 友希の大好きな絵の一つだ。
「ありがとう。そう言ってくれるのは、友ちゃんだけだ。……そうそう、この間から描いてる、友ちゃんの絵、今夜には完成すると思う。だから」
 と、承平が鍵を手渡してきた。
「これ、なに?」
「僕の部屋のスペアキーだ。明日、学校が終わったら、これで部屋に入って欲しい。あの絵は君にあげるよ」
 何か、おかしい。だから、友希は聞いた。
「お兄さんが直接、私に手渡してくれたらいいのに」
「……ゴメン、僕、明日には遠くに行くから」
「遠くって……。外国とか?」
 寂しそうに微笑んで、承平は言った。
「うん、まあ、そんなとこ。……じゃあ、僕、バイトだから」
 そして、承平は去って行った。
 その背を見ていると、友希の胸に言いようのない不安が沸き起こってくるのだった。


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