攻め込んできたカーナ・シー・エンパイアの、空中宮殿。その深奥部に乗り込むと、玉座に、その存在はいた。 「観念するのね、女帝モーダ・メーネ・カーナ・シー!」 玉座に座る美しく若い女が立ち上がる。 「よくぞ、ここまで来ることが出来たわね、○ュアウィズダム」 ウィズダムは、両の拳を構えて、ファイティングポーズをとる。 「パラディンとシャーマンが、頑張ってくれてるから!」 女帝モーダ・メーネが、ゆっくりと階(きざはし)を降りる。 「あなたほど聡明なら、もしかしたら、気づいているんじゃないの、我々がやろうとしていること、その本当の意味を?」 ウィズダムはうなずく。 「ええ。わかってるわ」 モーダ・メーネが険しい表情になる。 「なら! なぜ、私たちの邪魔をするの!? そんなことをしたら……!」 「私は、その先を知ってるから」 「……?」 モーダ・メーネが怪訝な表情になる。 「あなたたちの目的が達せられた、その先に待つもの。それは……」 そして、ウィズダムが語る。それを聞いて、モーダ・メーネの表情が強ばる。 「嘘よッ!? そんなこと、信じられない、信じられる訳がない!!」 ウィズダムはファイティングポーズをとったまま、首を横に振る。 「残念だけど、本当よ。その兆しが、すでに現れている。……そうでしょ?」 思い当たるところがあったのか、モーダ・メーネが息を呑んだ。 「……心当たりがあるのね?」 そこまで言った時、何者かの気配を感じて、ウィズダムは右手に視線をやる。壁が崩れて、一人の若い男が現れた。満身創痍(まんしんそうい)だ。 「ユメヤ!?」 モーダ・メーネがその青年を見て叫ぶ。その青年は、女帝モーダ・メーネの弟、ユメヤ・ブレタ・カーナ・シー親王だった。 ユメヤ・ブレタが言った。 「○リキュア、姉上には、指一本、触れさせんぞ……!」 激戦の中を、どうにか抜けてきたのだろう、よろけながら、こちらに近づいてくる。それを見て、ウィズダムは拳を下ろした。 「これ以上、あなたたちを傷つけるつもりはないわ」 ユメヤ・ブレタが怪訝な表情になる。ウィズダムは言った。 「あなたたちに、見て欲しいの。私は必ず、最善の道を見つけてみせるから」 モーダ・メーネが鼻で嗤う。 「フン、そんなこと、出来るわけが……!」 「出来るわ!」 強い調子で言ったからか、モーダ・メーネとユメヤ・ブレタが肩をふるわせる。その時、○ュアパラディンと○ュアシャーマンの二人が駆けつけた。 パラディンが言った。 「ユメヤ・ブレタ、やはりここに! ……大丈夫だった、ウィズダム!?」 「ええ、大丈夫よ。……モーダ・メーネ、それからユメヤ・ブレタ。どうか、私を信じて欲しいの」 二人は何を思うか。 しばらくして。 「……わかったわ。あなたを信じる」 「姉上!?」 「ユメヤ、私たちの目的も、○リキュアたちの目的も同じなの。だったら、彼女たちに任せましょう? でも」 と、厳しい目で、射貫くようにウィズダムを見た。 「もし、我らの危惧するような事態になったら、また、ここへ来るわ。それこそ、今以上の力で、ね」 ウィズダムはうなずく。 そして……。
「……んあ……?」 月曜日、エミィは目を覚まし、自分がベッドに入らず、テーブルに突っ伏したまま眠っていたことに気づいた。 「……ああ、あのまま寝ちゃったんだ……」 昨日、地図の一部を見つけた。その一部には、伝説の○リキュア・○ュアウィズダムのエンブレムの一部のようなものがあり、エミィはその正体を知りたくて、ペンデュラムやカードなどを駆使して、地図のパーツ、その行方を探っていたのだ。 伝説の書にヒントがありはしないかと、目を通してみたが、大部分に封印がかけられていて、解読出来ない。 それでもなんとか読めないかと、試行錯誤している内に、眠ってしまったようだ。 『エミィちゃん、朝メシだよー!』 キッチンから、シェア友の木部(きべ)苑美(そのみ)という女子大学生の声がした。今日は、彼女が朝晩の食事当番だ。 「もう、そんな時間か」 呟いて、エミィは立ち上がった。 その時。 「……? そういえば、なんか、夢を見た気がするけど……?」 何か、妙な夢を見たように思ったが、忘れてしまっていた。
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