祈璃は立ち上がる。ふと、スカートのポケットに何かがあるのに、気がついた。それを出し、見た瞬間、祈璃はすべてを理解した。 祈璃は決意とともに言った。 「私は私の夢を諦めない! まびきとの約束、絶対護る! 私はダンスで、みんなを喜ばせるんだ! 頑張れば夢が叶うことを、みんなに見せるんだ!」 そして祈璃は宣言する。 「叙事詩(サガ)、オープン!」 すると、ミラーに祈璃の姿が映る。実体の祈璃の周りを一冊の本が舞い、その本が開く。 「踊り子の章! サーコート!」 踊り子の着る、ノースリーブの服が描かれたページが外れ、ミラーのスリットに自動で差し込まれると、ミラーに映った祈璃の体にフィットし、現実の祈璃の体にも服が生まれる。 「オペラグローブ!」 長手袋が描かれたページが外れ、ミラーのスリットに。以下「ベルト!」「レッグストッキング!」……。変身後の彼女の髪はトパーズイエロー、ホープ・ジュエルのイエロー・トパーズはチョーカーとして輝いている。そして、それには鳥のごとき白い片翼があった。 変身した祈璃はステップを踏む。アンクレットに付いた小さな鈴が、闇を祓うような澄んだ音を立てた。 「夢をたたえるステップ、○ュアダンサー!」 祈璃改め、○ュアダンサーがポーズを決める。 ダンサーを敵と認識したのだろう、ゼツボーグがダンサーを見て、目を光らせた。 『ゼツボォォォォォォォォォグ!』 体が踊り出す。だが。 「残念だったね。踊りこそ、私の命!」 挑発するような笑みを浮かべて、ダンサーは自分の意志で踊り、ステップを踏んでゼツボーグに接近する。そして、身をひねって跳躍し、ゼツボーグにキックを放つ。その勢いで、ゼツボーグが六、七メートル吹っ飛ぶ。 ダンサーはさらにステップを踏んで、ゼツボーグを蹴り上げる。空高く舞い上げられたゼツボーグを見ると、ダンサーはチョーカーからホープ・ジュエルを外す。 イエロー・トパーズ越しにゼツボーグを見たダンサーは言った。 「あった、希望の星!」 希望の星は、ラチェットレバー……ゼンマイをまく器具に宿っていた。 スクエアミラーを掲げる。 「踊りの章! 軽やかな脚!」 オーバーニーソックスのようなストッキングの描かれたページを、ミラーのスリットに差し込むと、ダンサーのストッキングが鎧のようなデザインに変わる。そして、ダンサーがステップを踏むと、いくつもの音符が出現する。音符の玉はハート型をしていた。 「○リキュア、ドリームビートォォォォォォ!」 音符の群れがゼツボーグを覆い、光とともに、炸裂した。ゼツボーグが爆散する。 それを見てポーズを決めたダンサーが宣言した。 「輝く夢を、その胸に!」
クーキョンは面白くもなさそうに、言った。 「あーあ、また増えちゃった、○リキュア。でも。ものは考えよう、これで、行方がわからないホープ・ジュエルは、二つに減ったわ」 そして姿を消した。
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