「何やってるの、まびき! そこのステップは、そうじゃないでしょ!?」 「何べん言ったら、わかるのかな!?」 「違うだろ!? そこのターンは……!」 「特訓しよう! まびきはバランス感覚が弱点だと思うから、まずは平均台を使って……」
「……はっ!」 思わず、飛び起きた。 目覚まし時計を見る。 午前六時。ちょうど、その時、目覚ましのアラームが鳴り始めた。 祈璃(いのり)はボタンを押して、アラームを止める。呼吸が浅く速くなっていることに気づき、ふう、と息を吐く。 あの頃の夢を見た。ちょっと、寝汗をかいている。手で顔を覆うようにして汗を拭う。 「あの話、聞いたからかな? ……どうしてるかな、まびき……」 友の名を呟く。 いや。 はたして「友」といっていいのか? 祈璃は、まびきにとって、「友」なのか? 彼女は、「友」と思ってくれるのか? 頭を二度ほど、振る。 今日は日曜日。チャンネル更新のための撮影日だ。 ふと。 「私、この活動、続けてもいいのかな……?」 そう、呟いた。
エミィから電話をもらい、夢華は愛望、友希とともに、シェアハウスにいた。 午前十時半。日曜日でもあり、他のシェア友は、出かけているという。共用のリビングで、ガラステーブルの上にエミィは地図を広げた。 「プリンセスの反応があったの。それも、かなり強いものが!」 幾分、興奮気味だ。友希が言った。 「強いって、どういうことですか?」 エミィが答える。 「立ち寄ったのは、少なくともこの二、三日以内、ってこと! だから、もしかしたら何かのヒントが残ってるかも知れない!」 そして、地図を見る。この地図は、もともとファン・タ・シー・キングダムで作られた地図だ。だが、人間界にバラバラの状態で、散らばってしまった。 愛望が聞いた。 「前も聞いたけど。この地図と、夢の木市と、どういう関係があるの?」 エミィがうなずく。 「ファン・タ・シー・キングダムと、関わりがある世界の地図は、マッピング・マイスターによって作られているの。いずれ、友好関係を結ぶために。人間界の地図も作られているんだけど、カーナ・シー・エンパイアの襲撃で、バラバラになってしまって、それぞれの地域に対応するパーツに別れて、対応する場所に散らばってしまったの。ここ夢の木市の地図は、完全な形で見つかってないから、プリンセスや残りのホープ・ジュエルの探索に手間取ってるけど……」 夢華は、地図を見る。確かにここにある地図は、夢の木市の中央部分から東側のエリアだけのようだ。 エミィがハート型の重しのついたペンデュラムを地図の上に垂らす。一カ所に引っ張られるように、振り子が動いた。 それを見て、夢華は言った。 「ここって、駄菓子屋の近くじゃない?」 友希もうなずいた。 「確か、夢華先輩の家の近くですよね?」 エミィが難しい顔になる。 「おととい、私、学校帰りに夢華の家に行く途中、この駄菓子屋さんに寄った」 夢華が驚いた。 「ああ、そういえば、帰りに一緒に寄ったよね! じゃあ あの時プリンセスがいたかも!?」 愛望が苦笑いを浮かべる。 「時間まで同じとは限らないでしょ?」 エミィが微妙な表情になった。 「でも、何の気配も感じなかったの」 夢華が笑顔を向けた。 「ドンマイドンマイ! そういうこともあるよ! じゃあ、プリンセスをサガそう、オー!」 夢華が右の拳(こぶし)を天高く突き上げた。
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