町を流していたコードック。ふと、目にとまった女性がいる。眼鏡をかけたセミロングの女性。とぼとぼと道を歩いている。 「……へえ、いい色を出してるじゃないか」 そして、女性に近づく。五、六メートルまで近づいた頃、コードックは言った。 「お嬢さん」 「え?」 女性が振り返る。泣いたのだろう、涙の跡がある。それを見て。 「私が、あなたの哀しみを、癒やして差し上げましょう」 「……え? どういうこと……?」 きょとんとなった女性に、コードックは言った。 「もっと深い哀しみに……絶望に包まれれば、今の哀しみなど、忘れてしまいますよ?」 掌から、黒く濁った玉を出現させ、女性に投げる。すると、女性からも黒い玉が現れ、一つとなった。女性からの黒い玉が四角く平たい物体……電卓になり、コードックの投げた玉が鎧となる。 『ゼツボォォォォォォォォォグ!』 鎧兜を着けた身長八メートルの電卓が、今回のゼツボーグだ。そのゼツボーグ目がけて、コードックはテーヅ・マリーから託された、鈍色(にびいろ)の球を投げつけた。すると、電卓の「M+」「M−」のキーが一瞬、閃光を放った。
愛望が変身アイテム・スクエアミラーを手に言った。 「やっぱり、ただの痕跡のようね」 今、彼女のスクエアミラーには「探求者の目」という、眼鏡のデザインをしたスケルトンシートがセットしてある。このシートをセットして鏡をのぞき、眼鏡の位置に目を合わせると、一時的だが「超視力」を得ることが出来るのだ。 友希もうなずく。 「特に、何かの音はしませんし」 友希のスクエアミラーには、「探索者の耳」という、一見するとエルフのような上端がとがった耳のデザインのシートがある。 夢華はペンデュラムのシートだ。 「なんか、グルグルと回って、はっきりとわからないね」 エミィが残念そうに、捧げ持ったブルー・アクアマリンを下ろす。 「やっぱり、立ち寄った痕跡だったね。それもかなり前。多分、ファン・タ・シー・キングダムから人間界に来た頃のもの」 四人してガックリとなった時。 「うっきゅー!!」 ウッキューが翼をバタバタとさせて、夢華たちのところへ来た。そして首飾りの無色透明の玉を外す。玉から、無色透明の涙滴形の結晶が垂れた。 夢華たちは顔を見合わせた。 友希が言った。 「誰かが泣いてる!」 涙滴がぐるりと動き、ある方向を示す。 夢華が言った。 「あっちね!」 そして、一同は駆け出した。
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